第26話 税理士の約7割が相続税の廃止を望んでいます!

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相続税の専門家である税理士の中でも相続税の廃止を望んでいる人が多数に上ることが、『税理士新聞』が実施した読者アンケートで分かりました(総回答数180)。第2話の「相続税の課税根拠」において私見を述べさせていただきましたが、大多数の税理士も私と同じ考えのようです。昨年より相続税の最高税率が世界最高レベルにまで引き上げられ、同時に大衆税化しつつある相続税の意義について再度取り上げてみました。

 『税理士新聞』によるアンケートでは、実に回答者の約7割が相続税の廃止に賛成だとし、やはり最も多い見解は「二重課税」という問題でした。家族のために一生懸命に働き、稼いだ分から所得税をしっかりと納め、その残りを子供に譲るときにさらに課税されるのは二重課税に他ならないという考え方です。一方の相続税を存続させるべきとの回答には、「所有者が変わるのだから相続課税は当然」というコメントも散見されましたが、「二重課税論」に比べると少数意見です。昨年施行の改正法によって、課税対象の裾野が広がり、相続税の大衆化が促進されましたが、それよりも最高税率が50%から55%に引き上げられたインパクトの方が、かなり強かったようです。これにより、最高税率が、世界最高レベルにまで引き上げられることになりました。

 各国による制度の違いから単純比較はできないものの、米国40%、英国40%、仏国45%、独国30%となっています。世界では、そもそも相続税がない国や廃止した国も多く、スイス、カナダ、イタリア、オーストラリア、ニュージーランド、スウェーデン、マレーシア、タイ、シンガポール、中国などが該当します。

 なかでも、相続税の廃止と復活を繰り返してきたアメリカの相続税の歴史について少し触れたいと思います。

 アメリカで最初に相続税(遺産税)が制定されたのは1862年、南北戦争前の戦費調達のためにつくられたのですが、その8年後にこの税制は廃止されています。

実はその後何度も制定と廃止を繰り返すのがアメリカでの相続税の歴史です。そもそも相続課税は合衆国法に違反するのではないかという考え方があり、今まで制定の都度、何度も訴訟が起きています。また改正のたびに起こる非課税枠の大きさや税率変動も日本の比ではありません。

一番最近では2010年ブッシュ大統領の時代に相続税は廃止されています。これは時限立法でしたのでその翌年には相続税が復活し、2010年に亡くなった方は課税なし、2011年に亡くなった方には最高60%の課税という不思議なことが起こるのです。これも日本では考えられないことですね。

政治が共和党支持に振れるときには相続税は廃止され、民主党支持に触れるとまた復活するというのがこれまでの流れのようです。

日本では遺産の総額から基礎控除と呼ばれる非課税枠(3,000万円+法定相続人の数×600万円)を差し引いた額に相続税が課税されます。現在の最高税率は55%となっています。

一方アメリカでは、法定相続人の数には関係なく2016年現在:545万ドル(1$=100円の計算で約5億4千5百万円)までは相続税がかからないうえ、日本とは違い生命保険金などは遺産税の対象外とされています。現在の最高税率は40%です。
 また、夫婦の場合は無制限の配偶者控除が受けられます。ただし、財産を受け取る配偶者が、アメリカ市民以外だと適用されないので注意が必要です。

おまけにこの無制限の配偶者控除を受けた方が、申告することによりこの非課税額が通算されるため、一般家庭で次世代に遺産を相続させても10.9ミリオンドル(約11億円)までの財産には相続税がかからないことになっています。

また、日本ではこの非課税枠が減少の方向で改正されていますが、アメリカでは「遺産税は生涯所得に対する二重課税である。」という考えの下、非課税枠拡大の方向に税制改正されている結果、こんな格差が生じてしまいました。

アメリカでは国民のほんの一部の大金持ちだけが遺産税を納税することになるのです。

こうした世界の潮流から、高税率な相続税を避けようと日本から無相続税国に資産フライトする富裕層もいます。富裕層への過度な課税は国家的な危機につながるのではないでしょうか。少なくともいえることは、相続税の持つ現在の課税ベースの不均衡さについてで、累進とはいえ、相続財産6億円を上限に定められた最高税率は果たして適正なのかどうか。4千万円で最高税率となる所得税の累進ベースと同様に冷静に考え直してもらいたいものです。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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