第27話 年々増える「相続人なき財産」

%e7%8b%ac%e3%82%8a%e8%a8%80

「孤独死」が社会問題化して久しいですが、「誰にも相続されない遺産」の額もまた、年々増えてきております。身寄りがないなど、亡くなった人の財産を誰が相続するのかハッキリしない場合、裁判所が選任した「相続財産管理人」が財産を整理し、残った分を国庫に入れます。

この相続財産管理人の役割は、相続人が存在するかどうか不明な遺産を適正に管理し、清算することです。資格制度はなく、案件に応じて、公正中立に業務を行える適任者が選ばれることになります。

具体的な役割としては、相続人が存在するかを確認するとともに、家庭裁判所に報告をしながら、債権者に弁済をしたり、弁済をするために財産を換金したりするなど、財産の管理・清算を行います。そして、相続人が存在しないことが確定したケースで、清算後に残った財産がある場合は、それを国に帰属させます。

それでは、相続人が存在しないことが確定した場合は、清算後の財産は、常に国に入ることになるのでしょうか?

法律で決められた期間内に、被相続人と特別の縁故があったと主張する方に対し、家庭裁判所が相続財産の全部又は一部を分与することができるという制度があります。

この特別縁故者に当たる方の例としては、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者などが、民法で規定されています。

この制度は「被相続人は、ご自身と特別の縁故があった方に、財産を相続させることを望んでいる」という考えで、設けられた制度です。

では、相続人がいない人が「自分の財産が死後、どう使われるのか決めておきたい」と考えた場合、どんな手段があるのでしょうか。

そうした場合、遺言書を作成したり、信託制度を利用したりすることによって、誰(法人を含む)にどれだけの遺産を渡すかを決めておくことができます。このような方法を取ることで、生前お世話になった方や活動を支援したい団体等に財産を残すことができます。

世間には「終活」(人生の終わりをより良く迎えるための活動)などという言葉まで登場しているようですが、遺産や遺言について考えることも、その一環と言えるのかもしれません。

 では、その遺言にはどのようなものがあるのでしょうか?種類別にご説明します。

①自筆証書遺言

 自筆証書遺言とは、遺言書の内容・日付・氏名を全て自筆で書き、押印をする遺言のことをいいます。

 紙とペンと印鑑があればすぐにでも書くことができますので、費用もかからず簡単に作成できることが一番のメリットです。

 自筆証書遺言は、その名前のとおり、全てを自筆で記載をする必要があります。ワープロで作成しサインが自筆というものでは認められません。押印もする必要があります。印鑑は実印でなくてもよく、認め印、三文判でも大丈夫です。ただ、自筆証書遺言は、後々有効性が問題になることもありますので、実印を押した方が望ましいです。また、数枚にわたるときは割り印を押した方がよいです。日付、氏名等は正確に書かないと無効になり

ます。

 自筆証書遺言を実際に執行するには、まず、家庭裁判所の検認という手続を経る必要があります。検認を申立てるには、遺言者の出生から死亡までの全戸籍を集める必要があり、また、検認の申立をしても実際に検認を行う日は1ヶ月以上先に指定されることが通常です。このように、自筆証書遺言では検認手続に1ヶ月から2ヶ月程度要してしまい、スピーディーな執行ができないというデメリットがあります。

②公正証書遺言

 公正証書遺言とは、公正証書(公証人が作成する書面)で作成をする遺言のことをいいます。公正証書遺言は、公証人役場で作成をするので、公証人役場に連絡をする必要があります。公正証書遺言を作成するには、証人2人が公正証書遺言の作成当日に立会うことが必要となります。証人を設ける目的は、「遺言者本人に間違いがないことを確認するため」、「遺言者が自己の意思に基づき遺言をしたことを確認するため」、「公証役場で公に遺言を作成したことを確認するため」などです。

なお、次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができません。
1 未成年者

2 推定相続人・受遺者及びその配偶者並びに直系血族
3 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び雇人

  上記のとおり、遺言する人の身内(配偶者や親など)は証人になることが出来ず、ある程度第三者的な立場の人間が証人にならないといけません。つまり公正証書遺言は、作成に際して外部の人間が関与するため、遺言内容の秘密を完全に守ることが難しいという側面があるというデメリットもあります。

公証人役場での作成が普通ですが、病気等で出向くことができない場合は公証人が出張してくれます。適当な証人がいない場合には、公証人役場があっせんしてくれます。

 公正証書遺言なら、検認が不要なので死亡後すぐに遺言に従った遺産分割手続を始めることができます。また、公証人役場で保管されるので、紛失のおそれはありません。

 このように良いことづくしの公正証書遺言ですが、費用がかかってしまうという点がデメリットです。遺言公正証書の作成費用は遺産の金額や相続人の人数により異なります。

 ただ、紛争防止のためには、費用がかかっても公正証書遺言の方が安心だといえます。

③秘密証書遺言

 秘密証書遺言とは、遺言内容を秘密にしつつ公証人の関与を経る方式の遺言をいいます。

 証人に内容が分かってしまう公正証書遺言と異なり、遺言内容について誰にも知られずに作成できます。結婚をしていない女性との間に生まれた子どもに財産をあげるなど、誰にも知られたくないことを遺言書に書くために使います。

 ただ、実際には、公正証書遺言でも証人は公証人役場で遺言者と無関係の人を紹介してくれますし、自分で遺言書を保管しておけば遺言の中身を他の人に知られることもありません。結果として、秘密証書遺言は、余り使われていないというのが実情です。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

「所長の独り言」一覧はこちら

 

免責
本記事の内容は投稿時点での税法、会計基準、会社法その他の法令に基づき記載しています。また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行うか、十分に内容を検討の上実行してください。当事務所との協議により実施した場合を除き、本情報の利用により損害が発生することがあっても、当事務所は一切責任を負いかねます。また、本記事を参考にして訴訟等行為に及んでも当事務所は一切関係がありませんので当事務所の名前等使用なさらぬようお願い申し上げます。