第56話 空き家リスクとそれに対する対策について(5)  

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~ 賃貸する ~

 

空き家の問題点はそこに誰も住んでいないという点にあります。そのため、家族の中で誰も空き家を使う予定がなければ、貸家として賃貸に出すことも一つの選択肢となります。 

例えば生前に老人ホームなどに入居するにあたって実家が空き家になることが確定したような場合は、その時点で室内を改装して賃貸に出すという選択肢もあります。すると、将来相続が発生した際に、実家の評価額が自用地としてではなく貸家建付地と貸家として評価できるため、一定の節税効果も期待できます。

また、土地については、小規模宅地等の減額制度により200㎡まで50%の評価減を受けることもできます。

空き家を賃貸として貸し出す場合、自ら物件の管理や借り手の募集をすることはできませんので、通常、不動産業者等に依頼することになりますが、その方法には大きく2種類あります。

まず、管理委託方式といわれる一般的な方法です。不動産のオーナーは賃借人と直接契約をし、賃借人から賃料をもらいます。それらの事務処理や物件の管理を不動産業者等に委託し、委託手数料(賃料の4~8%程度)を支払います。委託手数料は比較的安くすみますが、賃借人が入れ替わるときには、契約処理やクリーニングなどをオーナーの責任で行わなければなりません。

次に一括借り上げ方式といわれる方法があります。サブリース方式とも呼ばれ、最近注目を浴びている方法です。不動産業者等がオーナーから一定期間を決めて借り上げ、それを賃借人に転貸(また貸し)します。賃借人との契約や賃料の受け取りは不動産業者等で行い、賃料の85~92%程度がオーナーに支払われます。借り手がつかず空き家になる期間があっても一定金額の家賃が保証されたり、家賃滞納に関わるトラブルが生じなかったりといったメリットがあります。

ただ、注意点ですが、オーナー側に家賃保証のメリットがあるということは、不動産業者側から見たらリスクとなります。そこで、「30年一括借り上げ」などと銘打っていても、業者側から解約できるという文言が入れられていることがあります。賃貸需要がなくなった時点で解約されて、「住めない、売れない、貸せない」の三重苦の家だけが残るというようなことがないように、一括借り上げの契約時にはよく契約書を確認するようにしましょう。

売却同様に賃貸でも、築年数が古かったり駅や都心部から距離があったりすると、借り手が全くつかない可能性もあります。特に、賃貸需要がない地域の空き家である場合には、空室期間が続き、負債だけが増えるケースも見られます。

家の種類や地域によっても需要は異なります。都心部であればマンション・一戸建て共にある程度の需要はあります。1LDK・2LDK等の面積の少ない物件でも、独身の方や子供のいない夫婦などが借り手となります。一方、郊外や地方であれば、3LDK以上の広めのマンション・一戸建てなら需要があります。

借り手がないのは、郊外の駅からバスで10分といったベッドタウンにある面積の狭い中古マンションです。基本的に3LDK以上でなければファミリー層は寄り付かないですし、独身や若い夫婦は都心回帰で郊外には住みたがりません。どうしても貸したければ、賃料を下げるかペット可にするなどしかありません。

貸し出す前に、まず需要があるのかどうか、不動産業者に確認を取ったり実際に自分の足で周辺を観察したりしてみるなど確認をするようにしたいものです。

また、もう一つの注意点は賃貸経営には経費がかかることです。賃貸経営をする場合には、多くは最初にリフォーム・リノベーションを必要とします。和室を洋室に変える、部屋の間仕切りを外してLDKにする、トイレ・バスを新しくユニット形式に入れ替えるなどすれば、借り手がつく可能性が増えますが、これらの改修に初期費用として50万~300万円程度かかります。さらに、賃貸中にも、管理委託費や税金の支払い、賃貸に当たって不動産業者への仲介手数料の支払いや退去時の経年劣化に伴うクリーニング費など、多くの経費が発生します。これら全ての費用を試算したうえで、収支が黒字になるのかどうか事前によく検討するべきでしょう。

賃貸経営をするうえで抑えておかなければならない直近の情勢として、平成27年1月の相続税の基礎控除額の引き下げ以降、相続税節税を狙った賃貸アパート・マンションの建設が増加し、その結果、空き室が急増しているという実情があります。意外にも、東京・神奈川・千葉などの都心部で空き室が急増しており、その割合は3割を軽く超えています。

よほど魅力的な物件でない限り3割は空き室になるという覚悟をもって、賃貸経営に臨む必要があると思われます。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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