第158話 民法と相続 (2)

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相続は、民法上で規定されておりますので、民法上どのように規定されているかをまず理解しなければなりません。

 そのうえで、課税技術上の相続税法を理解する必要があります。

 相続人に対する考え方一つとっても、民法と税法では異なります。

 亡くなった方(被相続人)の財産を誰が相続出来るかは民法で決められていて、その民法の規定に従って選ばれた方のことを「法定相続人」と言います。相続税の計算でも、基本的にはこの民法の規定を尊重していますが、一部、相続税法で独自に定める相続人の範囲を計算の中で適用していく場面があります。

 まず法定相続人には誰がなれるかをご説明します。

 死亡した人の配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。

第1順位

死亡した人の子供

その子供が既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など)が相続人となります。子供も孫もいるときは、死亡した人により近い世代である子供の方を優先します。

第2順位

死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)

父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。第2順位の人は、第1順位の人がいないとき相続人になります。

第3順位

死亡した人の兄弟姉妹

その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子供が相続人となります。第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。

なお、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。

また、内縁関係の人は、相続人に含まれません。

 しかし、相続税の計算では、恣意性の排除を目的として、民法上の相続人とは別に定めた「相続税法上の相続人」を計算に使っていく場面があります。

 具体的に言いますと

1 法定相続人の中に養子がいる場合には、以下の人数までしか相続人には含めません。
  ・被相続人に実子がいる場合…養子のうちの1人まで
  ・被相続人に実子がいない場合…養子のうちの2人まで
2 相続の放棄をした人がいても、その放棄が無かったものとした場合の相続人とします。

 

つまり、被相続人の死亡当時の家族構成が

  • 配偶者
  • 子4人(うち実子が1人で、残りの3人は養子)

だとした場合、相続の放棄が無ければ民法上の法定相続人は「配偶者と子4人の計5人」となりますが、相続税法独自の相続人は「配偶者と実子1人+養子3人のうちのどなたか1人の計3人」となります。

同様に、被相続人の死亡当時の家族構成が

  • 配偶者
  • 子供1人
  • 両親や祖父母は既に死亡
  • 兄弟姉妹3人はまだ健在

だとした場合、もし子供が相続を放棄すれば、民法上の法定相続人は「配偶者と兄弟姉妹3人の計4人」となりますが、相続税法独自の相続人は「配偶者と子の計2人」となります。

こうして選び出した独自の相続人を、これらの計算の中で用いていくわけです。

ちなみに、上に書いた「実子」には、

  • 特別養子縁組の手続を経て養子となっている方
  • 配偶者の連れ子の状態を経て養子となっている方
  • 被相続人の子供が既に亡くなっていたため代わりに相続人となった孫やひ孫

といった方も含めて考えていきますので、これらの方がいらっしゃる場合、ここでの相続人には養子は1人までしか入れられませんので注意が必要です。

わざわざこんなにややこしくしなくてもいいのにと思われる方も多いと思いますが、その理由は、恣意性に左右されない公平な課税を実現させるためです。

実際、この規定が無かった頃には、基礎控除の金額を大きくするために10人単位で養子を迎え入れたりする方もいらっしゃいました。

同じ家族構成、同じ遺産の額で、それぞれの意思(放棄をするかしないか、養子を取るか取らないか、財産を貰うか貰わないかなど)によって税額に大きな違いが出たらそれは困るということから、現在の形が出来上がりました。

民法が財産をどう分けるかを規定している法律なのに対して、相続税法はそれを踏まえてどう税額を出すかを規定している法律であるというスタンスの違いもあります。

どっちの法律でも同じ相続人の範囲を使えればそれが一番わかりやすくていいのですが、それによって税負担の「公平さ」が損なわれるのであれば、独自の規定を設けるのも仕方無いといえるのかもしれません。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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