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 日本などを中心に主要国が共同して、米国の輸入制限措置をWTOに提訴する可能性も考えられます。WTOのルールは、安全保障を理由にした貿易制限を認めていますが、今回の措置はそれに当たらないとの見方が、加盟国内では多くみられます。
 米国と主要国が報復的に関税をかけあう泥仕合へと陥るよりも、WTO提訴の方が、国際秩序に沿った理性的な行動と言えるでしょう。その結果、一気に貿易戦争の様相は強まらない可能性があります。
 しかし主要国が共同でWTOに提訴した場合に、米政府がそれに反発してWTO離脱に踏み切る可能性も否定できません。その場合には、米国第一主義、米国孤立主義がより際立ち、通商以外の分野にもその傾向を広めるきっかけとなってしまうことも懸念されるところです。もちろん、WTO提訴を受けて米政府が鉄鋼・アルミニウムの輸入制限を見合わせれば、事態は収束に向かいますが、そこまで楽観的に考えることは現時点ではできないでしょう。

 先月から米国で生じている長期金利上昇、株価下落の背景として、足もとでの賃金・インフレ懸念が注目されていますが、それ以上に重要なのは、トランプ政権の経済政策に対する金融市場の警鐘という側面です。米国経済は既に需給ひっ迫傾向を徐々に強める中で、過去最大の大型減税に加えて、大型インフラ投資を重ねて実施することは、景気対策として必要でないばかりか、供給制約や中長期的なインフレリスクを生じさせるなど、経済を不安定にさせてしまいます。さらにトランプ政権は、貿易赤字の縮小を目指していますが、こうした拡張的な税・財政政策は、確実に貿易赤字を拡大させてしまうという矛盾を孕んでいます。

 それは、ドルの信認を損ねる「双子の赤字」の問題を深刻化させるでしょう。また輸入制限、関税引き上げなどの保護主義的な通商政策は、やはり中長期的なインフレリスクを高めてしまいます。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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