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 「オフィス北野」で起きた社内分裂のトラブルは、事業承継の場や経営判断をめぐる派閥抗争など、すべての中小企業で起こりうるものです。そしてこれらのトラブルから起こるリスクが、現在高まっています。

 その理由として、今年4月からスタートした事業承継税制の新特例です。

 事業承継税制は、後継者が贈与や相続によって引き継ぐ自社株にかかる税負担を猶予するものです。従来の制度では猶予できる税負担に制限がありましたが、新特例では一定の要件を満たすことによって、全自社株について贈与税と相続税の100%を半永久的に免れることができるようになっています。

 これまでの制度に比べても圧倒的な税優遇のメリットがあるだけに特例を使って事業承継をしたいと考える社長も多いと思います。しかし特例を利用するためには、今後5年以内に承継計画を作成し、10年以内に自社株の贈与を済ませなければなりません。

 ここで危惧されるのが税優遇を優先するあまり急ぎ過ぎて承継計画自体が疎かになってしまう可能性があることです。経営計画をしっかり煮詰めないと、今後の方針のすり合わせや社員の周知徹底を満足にできないまま経営を引き継いでしまいます。そうなると先代と2代目や、2代目と部下たちとの溝が深まり、オフィス北野のような社内分裂に発展しかねません。

 税金はあくまでも承継の一つの側面にすぎません。経営権や人材など、会社の持つあらゆる財産を円滑に次の経営体制に引き継いでこそ事業承継の成功だということを肝に銘じてもらいたいです。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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