第449話 名義と実質が異なっている場合

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 名義と実質が異なっていることにより、問題が生じることがあります。

 例えば、登記の名義は個人ですが、実際は法人が使っている建物の譲渡所得は、個人で計上すべきかどうかとか、過去に贈与したはずの登記の名義が変わっていない場合の贈与税の取り扱いとか…

 原則的には、税には実質課税という原則がありますので、名目ではなく実質で見るべきです。しかし、一義的には税務署も登記などの名義で判断しますから、実質に即して申告しますと、税務署から問題視されないか不安の方もおられると思います。

 名義と実質が異なる場合の典型例の1つに、個人で不動産投資を始めた不動産オーナーが、法人成りをする事例があります。法人成りですから、本来は個人から法人に土地建物を譲渡し、その名義を個人から法人に書き換えれば足ります。しかし、抵当権などの担保の問題や返済能力の問題などで銀行によっては、「法人成りすることは構いませんが、不動産の登記は個人のままにしてもらわないと困ります。」と指導され、建物は法人に譲渡するものの、登記は移さないことが多くあります。

 先のとおり、不動産登記の名義に関係なく、法人に売って法人が資産を使うようになれば、その資産は法人の資産としてみるのが妥当です。

 しかし、裁判判例を見てみますとそこまで単純な話ではありません。

 この裁判判例では、個人名義の不動産に係る不動産収入を、自分が経営する会社の売上として計上したことが問題となりました。結論として、その不動産収入は、会社の売上ではなく個人の売上にすべきであると審判所は判断しています。

 このような判断がなされた理由として、会社に収益不動産の登記を移さない合理的な理由がないこと、店子との間で会社が新たに契約書を取り交わして契約すべきなのにそれをしていないこと、などが挙げられています。

 すなわち、実質的にはこの収益不動産は会社の資産と見るべきですが、名義を変えない合理的な理由がない状況であれば、会社ではなく個人の不動産としてとらえられる可能性があることになります。もちろん、その反対解釈として、登記の名義がかわっていない合理的な理由があれば、会社の資産として見ることもできるということになります。

 以上を踏まえると、法人成りなどの際、会社に自己の資産を譲渡する場合には、原則としては登記の名義を会社に変える必要があるものの、それが無理な場合は、その理由をしっかりと残しておく必要があることになります。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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