baken1030

 国税庁は今年の7月5日、競馬のはずれ馬券の取り扱いに関する改正通達を公表しました。去年12月に最高裁が下ろした馬券の所得区分に関する判決を受けたもので、原則的に「一時所得」にあたる馬券の払戻金がどれだけ恒常的、網羅的な購入であれば「雑所得」に当たるのかの“境界線”を提示したものです。

 これまでは雑所得に当たる馬券購入は予想ソフトを使用したケースに限定していましたが、ソフトに頼らなくても網羅的に馬券を購入して継続的に利益を上げれば雑所得と認める内容になっています。

 改正された通達は、馬券の払出金が「一時所得」に当たるか「雑所得」に当たるかの新たな判断基準を示したものです。それによれば自動ソフトを利用するか、「予想の確度の高低と予想が的中した際の配当率の大小の組合せにより定めた購入パターン」に従って、「年間を通じてほぼ全てのレースで馬券を購入」し、「回収率が100%を超えるように馬券を購入してきた場合」に限って、馬券の払戻金を「雑所得」と認めるとしています。

 「一時所得」か「雑所得」、どちらの所得に含まれるかで、それぞれ経費として認められる範囲が大きく変わり、一時所得であれば、収入に直接要した金額のみが経費として認められるため、収入に直接結びついていないハズレ馬券の購入費用は経費にあたりません。

 一方、雑所得では経費の範囲が大きく広がり、「その他業務上の費用の額」にハズレ馬券の購入費用が含まれることになります。

 例えば2015年に最高裁でハズレ馬券の経費性を争った男性は、約30億円の払戻金を得るために約29億円の馬券を購入していました。そのうち当たり馬券の購入費用は1億3000万円でしたので、雑所得であれば課税所得は1億円ですが、一時所得だと28億7000万円に所得税が課税されてしまうことになります。

 最高裁では2015年、2017年と2度にわたってハズレ馬券が経費に当たるとの判断を示しましたが、雑所得として認められる経費の範囲がなし崩し的に広がれば、全国の競馬ファンから同様の訴訟をおこされることになり大変なことになりますから、国税庁の示した改正通達案は非常に限定的な説明になっています。雑所得として認められるのは、営利を目的とする継続的行為に該当する例外的な場合であって、その際、競馬の馬券購入に際して予想ソフトを使用しなくても認められるというもの。

 国税庁は、競輪の車券の払戻金等に係る所得についても、競馬の馬券の払戻金に準じて取り扱うことに留意するとの注釈を追加しています。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

「所長の独り言」一覧はこちら

 

免責
本記事の内容は投稿時点での税法、会計基準、会社法その他の法令に基づき記載しています。また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行うか、十分に内容を検討の上実行してください。当事務所との協議により実施した場合を除き、本情報の利用により損害が発生することがあっても、当事務所は一切責任を負いかねます。また、本記事を参考にして訴訟等行為に及んでも当事務所は一切関係がありませんので当事務所の名前等使用なさらぬようお願い申し上げます。