68f2ff8ce6c4d3c384368feaecd41a23_s

 先日、「横目調査」という違法な手段で納税者の申告漏れ情報を得たことに対する裁判がありました。

 この裁判では、大阪国税局のマルサの職員が証言に立つという前代未聞の事態に発展しましたが、その職員は別の脱税事件の調査でインターネット銀行に顧客情報の開示を受けた際、多額の残高がある被告の口座を「偶然」発見したと裁判で証言したそうです。

 そもそも「横目調査」とは、税務調査官が銀行などに出向いた際に本来の税務調査とは直接関係ない者の口座情報を「横目」で覗き見るような調査方法を言います。

 「横目調査」が問題になるのは、本来は税務調査で確認できる情報等は、調査対象の納税者やその取引先に限定しているからです。取引先には銀行も含まれますので、ある納税者の口座情報を確認することはできますが、その納税者の取引先などを調査するには、あくまでもその納税者に関係のある情報のみ確認することができるとされていますので、法律の建前からすれば「横目」は違法という話になります。

 とはいえ、「横目調査」は国税の税務調査では至極一般的に行われているのが現状であり、上司の指示で行うことはもちろんのこと、横目調査を中心に行うセクションすら存在するほどです。国税としても、「横目調査」に法律上の問題があることは十分に理解しているのですが、このような手法を使わないと脱税者を発見することは難しいですから、必要悪として実施しています。

 すなわち、「横目調査」は国税が意識してやっているものですから、「偶然」に別の納税者の情報を発見するということはありえません。偶然に納税者情報を見たのであれば、その情報を今後の税務調査に活かすためにまとめておくなんて行動はとらないはずです。この「偶然見た」という証言は嘘八百で、実際は意図的に他の納税者情報を見ているという話に当然になるはずです。

しかし裁判所は「(調査手法には)違法な疑いが残る」と指摘したものの、「量刑を左右する理由にはならない」と、収集した証拠は有効であるとして納税者に有罪の判決を言い渡しました。本来違法であるはずの「横目」ですが、「つい見えちゃったもの」に加え、「横目」の疑いがあっても調査資料としては問題なく通用するということになります。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

「所長の独り言」一覧はこちら

 

免責
本記事の内容は投稿時点での税法、会計基準、会社法その他の法令に基づき記載しています。また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行うか、十分に内容を検討の上実行してください。当事務所との協議により実施した場合を除き、本情報の利用により損害が発生することがあっても、当事務所は一切責任を負いかねます。また、本記事を参考にして訴訟等行為に及んでも当事務所は一切関係がありませんので当事務所の名前等使用なさらぬようお願い申し上げます。