第512話 審判所の視点

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 貸宅地(第三者に貸していて、その場所に家や事務所などを建てている土地)の相続税評価をめぐり、国税庁の評価は高すぎるとして納税者が争った事例があります。(平成30年1月4日裁決)

 この事案は、国税庁の財産評価基本通達に基づき、納税者が更地価額の3割で評価した金額(約2億1900万円)で相続税を当初申告していましたが、相続後に一括してその底地を買取業者に売却、その売却金額を基に時点修正し更正の請求をしたところ、税務署が認めなかったことで争いとなったものです。

 問題となったのは、私道を含む貸宅地7筆約980㎡の宅地。納税者は、宅地を個別に管理して売却処分することがわずらわしいと感じ、相続当初から一括して売却することを考えていました。実際、買取業者に売却することを決め、他の買取業者からも「買付証明」をもらい、9800万円で売却しました。納税者は、この金額を基に地価の平均変動率を用いて、相続時点の金額を逆算して払い過ぎた相続税の還付を受けようと更正の請求をしました。

 納税者は、「需要者は底地の買取業者に限定されることも踏まえると時点修正した主張額は、相続開始日における各土地の時価を占めるもの」として財産評価基本通達を適用することが著しく不適当と認められる特別の事情があると主張。

 しかし、国税不服審判所は、買取業者について以下のことを指摘しました。

 

  1. 底地割合40%の地域で更地価格の10%程度で買取価格を決定している
  2. 買取後1年以内に4筆を借地権者に売却しているがその時には買取価格の5倍以上であった

 

こうした点を踏まえると納税者が借地権者と個別に交渉し売却することができたし、その取引方法を買取業者に対する一括売却に限定する事情も認められない。買取業者に売ったからこそ自由な取引が行われる場合に成立すると認められる価額を下回ることになった。これらの理由から時価ではないとして納税者の言い分を退けました。

 貸宅地の相続税評価に当たって「特別の事情」が認められたのは、借地権付きマンションの底地のケースがあります。(平成9年12月11日国税不服審判所裁決)この事例では、区分所有の建物とともに借地権を持つ人が多いため更地に戻る可能性が著しく低いことが特別の事情として認められています。

 ただ単に価額が低いだけでは、財産評価基本通達の適用について不適当と認めてもらうのは難しいようです。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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