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 税務調査対策の基本ですが、調査官から何か指摘を受けたとしてもその場ですぐに指摘事項について反論しない方がよいと思われます。へたに反論をしてしまうと都合のいいことしか聞かない調査官に言葉尻を捕らえられて不利に働きますし、その指摘事項に関して本当に是正させるかどうか、その決定権は指摘をした調査官本人にはなく、その上司にありますので、目の前の調査官に反論してもあまり意味がないからです。このため、調査官から何か指摘を受けても、その場でムキになって反論するのではなく、後日調査官に上司の判断を仰いでもらった上で、是正させる必要があるのであれば、再度交渉の機会を設けてもらうという対応の方が望ましいです。

 たとえば、こちらから問題になっている指摘事項について、一旦持ち帰ってもらえば、金額的に大きな問題は別として、金額的に小さな問題はおとがめなしになることがよくあります。というのも、上司に報告する調査官にとっては報告する手間が面倒ですし、報告を受ける上司としても、実績につながらない金額的に小さな問題まで報告を受けるとなると面倒ですので、調査官の判断で報告しないことも多々あるからです。

 なによりもこのような交渉を心掛けていると、税務調査対策の王道ともいえる調査の長期化にもつなげることができます。調査官は件数消化に追われていますので、わざと長期化させることで、調査官から有利な譲歩を得ることが多々あります。このように日を改めてとなれば自動的に税務調査も長期化しますので、ほぼ無条件に自分に有利な状況を作ることができます。なお、調査官はたくさんの税務調査の事案を持っていますから、日を改めるという連絡は相当時間がたってからになることがほとんどです。

 ところで、税務調査でよく問題になる、調査官が確認できる資料の範囲についても、このような対応は効果的です。事業に関係する資料しか調査官は確認できないと法律に明記されていますが、事業に関係する資料に当たるかどうか、判断が分かれる資料が実際の税務調査ではよくあります。このような資料について、「本当に事業に関係すると言えるのかどうか、一度上司の方に判断を仰いでください」と申し出ますと、先のとおり報告の面倒臭さも手伝って、今回の税務調査では確認しなくてもよいとなることが多いのです。

 いずれにしても、最終的な決定権は目の前の調査官にはありませんので、その調査官がいうことは話半分に聞いて後日じっくりと上司と含めて話し合いましょうというくらいのゆったりした対応の方が税務調査では望ましいです。

 勘違いしないでくださいね。焦っているのは向こうなのですよ。こっちが焦る必要はなにもありません。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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