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 高齢化社会に伴い、もし自分が認知症を発症した時に財産をどう管理するかを考えなければならない時代になってきています。他者に資産の管理を委ねる手段としては成年後見制度もありますが、同制度よりも管理者の裁量の大きな「信託」を利用する方々が増えてきています。

 信託には、家族や顧問税理士といった個人に委託する「民事信託」と、信託銀行のような専門の機関に頼む「商事信託」があり、それぞれに長所と短所があります。

 商事信託は、信託業務を専門に扱うプロに任せられるという安心感がある反面、民事信託と比べて財産の運用管理に制約が設けられています。また、上場株式や国債といった金融財産は商事信託でも任せられますが、不動産や未上場の自社株など、民事信託では自由に委託できた財産が信託銀行には預けられません。さらに託した財産についても民事信託ほど自由に運用できず、信託銀行に資産規模に応じた報酬を払い続けなければならない点は、商事信託のデメリットと言えるでしょう。

 こう聞きますと、商事信託より自由度が高くて報酬も比較的廉価で済む民事信託の方が優れていると思われがちですが、裏を返せば、報酬が高いということはそれだけプロの仕事が期待できるということです。信託を活用する上で最も重要なことは、信頼して財産をまかせる人を選ぶことに尽きます。受託者に与えられる裁量は大きく、もし悪用されれば委託者や受益者が被る被害も甚大です。運用の自由度が高い民事信託を利用しても、受託者の裏切りがあれば相続プランは台無しです。

 また民事信託は、制度の歴史が浅く、まだまだ実務でのノウハウの積み上げができていないという側面もあります。コスト、受託者の信頼性、自分の望む資産運用をしてもらえるのかなどの点を総合的に考慮したうえで、家族や顧問税理士をはじめとする関係者ともよく話し合い、将来にトラブルの種を残さないようにしたいものです。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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