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 被相続人が残した財産のうちで借金の占める割合が高いときなど、相続に魅力が感じられないケースや、家業の経営を安定させるために後継者以外の兄弟姉妹が相続を辞退するときなどに使われるのが相続放棄の制度です。相続人であることを本人が知った日から3カ月以内に「限定承認」か「相続放棄」のどちらかを選択、もしくは家庭裁判所に期間の伸長を申し出なかった相続人は「単純承認」としてすべてを相続したものとみなされます。全国の家庭裁判所に持ち込まれた相続放棄事件の受件数は1933年には58,490件だったのが2015年には189,381件と3倍以上に増加しています。

 借金だらけの財産は欲しくないのは当然のこととして、このときに気になるのは死亡保険金です。相続人に関するカネはすべて放棄したことになると考えがちですが、相続放棄の対象となるものは「被相続人の財産」に限定されますので、相続人を受取人とする死亡保険金は、相続放棄をしたとしても受け取ることができます。保険金は被相続人の財産ではなく、被相続人の死亡と同時に相続人固有の財産となるからです。

 ですが保険金の受取人を被相続人自身にしてしまいますと、死亡時にも被相続人の財産となってしまいますので、相続放棄をした相続人は生命保険金を受け取れなくなります。

 死亡保険金は、法律上相続財産ではありませんが、相続財産とみなして相続税が課税されます。つまり相続放棄をした人はその死亡保険金についての相続税は納めなければならないことになります。

 なお、遺族年金や会社の支給規定に基づいて支給される死亡退職金も、生命保険金同様、通常は相続財産にはならず、相続放棄をしても受け取ることができます。

 死亡保険金は「500万円×法定相続人の数」までが非課税となりますが、この「法定相続人の数」には、相続放棄をした人も含めるので注意が必要です。そして相続を放棄した場合は相続人とはみなされないため、受け取った生命保険金については、非課税金額の適用を受けることはできません。

 

例えば、法定相続人が3人(妻)・(子A)・(子B)、
死亡保険金受取人が2人(妻)・(子A)で(子A)が相続放棄した場合、

  • 子Aは死亡保険金を受け取れますが、非課税の適用は受けられません。
  • 妻は「500万円×3人=1,500万円」まで非課税の適用を受けられます。

 

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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