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第589話 調査官のホンネ

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 相続税調査にあたり財産の有無の確認は、相続人のもとに調査に訪れる前の段階から行われています。税務署は納税者の事前了承を得なくても様々な情報を入手することができます。

 まず金融機関に対して情報を照会できます。この際、税務署は相続時点の残高だけではなく、過去10年程度の預貯金の入出金や借入金を調べることが権限で認められています。つまり、納税者に知られることなく預金情報は筒抜けになっているということになります。

 また税務署は、証券会社からは被相続人の証券の保有状況、法務局からは不動産情報、生命保険会社からは保険契約といったデータを集めることが認められています。税務署が保管している被相続人・相続人の所得税確定申告書も調査官にとって貴重な資料になります。

 さらに中小企業経営者の資産の調査では、過去の法人税申告書も必ず見られます。経営者が被相続人になりますと、申告漏れ税額が多額になりやすく、徴収できる税額も多くなります。調査官にとっては、宝の山と言えるでしょう。

 署内での審査を経て調査に入ることが決まりますと、担当官が顧問税理士もしくは相続人に電話をかけ、「来週中に話を聞きたい」などと連絡することになります。調査する側では日常のことでも、納税者にしてみれば慣れないことであり、税務署が指定した日程に合わせてしまいがちです。ですが、必ずしも提示された日程に合わせる必要などなく、税理士や他の相続人など関係者に相談しながら日程を決めるほうがよろしいと思います。

 調査官は家のチャイムを鳴らす前から相続人が住む家のつくりや庭の状況に目を光らせます。調査対象者と顔を合わせた後も、玄関や廊下の調度品にチェックを続けます。例えば、壁に額を掛けていたような跡が残っていれば、隠し財産を疑われることになります。

 調査官は焼香をした後、相続人に「故人はどのような方だったのでしょうか」などと話しかけてきます。相続人は軽い気持ちで話し出すかもしれませんが、何気ないように思える問いかけでも、調査官の狙いは決して世間話で場を和ませて話しやすい環境を作る事ではありません。被相続人の趣味についての質問さえ、調査官は隠し財産を探すための糸口にしています。何気ない会話でも、調査の一環であることを忘れてはいけません。調査官のホンネを()書きしますと、

  1. 焼香させていただきたい。お手洗いを借りたい。(申告されていない高額な財産がないか、家の中を見回って確認したい)
  2. 故人の趣味は何でしたか。(ゴルフ好きならゴルフ会員権、ヨットが趣味ならヨットを所有していないかといった隠し財産がある可能性を知りたい)
  3. 故人の死因、病歴、療養期間を教えてほしい。(長期入院期間の口座からの出し入れは、故人以外の人が勝手にやっていた可能性がある。また故人が認知症を発生していたら、意にそぐわない財産移転があった可能性がある)
  4. 故人はこれまでどのような仕事をしてきたのですか。(これまでの収入がどれ位なのか知りたい)
  5. 故人は日記を残していましたか。SNSをやっていましたか。(日記などから財産にまつわる情報を読み取れるかもしれない)
  6. 香典帳を見せてほしい(被相続人の交友関係を洗い出したい。申告書に記載されていない金融機関の行員との付き合いがあれば、隠し口座がある可能性も。)
  7. 相続人はどのような仕事をしているのか、生活費はどの程度か。(相続人はどの程度の資産を築いているのか。所得に見合わないような多額のお金が口座に入っていれば、「名義預金」の可能性がある)

 

 調査官が何気ない質問の中で特に探り出そうとしているのが、現預金の中でも、口座名義人と実際の所有者が異なる「名義預金」の有無です。被相続人の配偶者や子供の名前で作られた口座でも、被相続人が生前に通帳を管理し、名義人のあずかり知らない状況で出入金をしていたのなら、その預金は名義預金と認定され、相続時に他の資産と合わされて相続税の課税対象となります。名義預金となるかどうかの判定は、誰が実質的に口座を管理していたかという点で、印鑑や通帳をどう保管し、使用されていたかが見られます。預金のお金の出元自体も、実質的な所有者を判定する際の重要な要素となります。

 調査官は名義預金を探し出すために、葬式の芳名帳や香典帳、年賀状、アドレス帳、日記帳などに金融機関の関係者の名前がないかどうか入念にチェックします。申告関係書類にその金融機関との取引に関する記載がなければ、被相続人名義で申告されていない口座、すなわち名義預金が存在する可能性を疑うことになります。

 なお調査は午前10時に始まり、昼食をはさんで午後3~5時に終了するのが一般的です。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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