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 日本で稼いだ分の税金は日本に納めるのが筋とはいえ、近年の富裕層を狙い撃ちした税金の数々はさすがに目に余ります。だからといって財産を持って国外に移住するにはハードルが高すぎます。

 そもそも日本から海外への移住を巡る税金のルールは、近年になって急速に厳しくなっています。去年の3月までは、相続人と被相続人の両方が5年を超えて海外に住んでいると、海外資産に対しては日本国内での相続税は課されていませんでした。

 しかし去年の4月からは、5年超という要件が2倍の10年超に引き上げられました。これまでは親子ともに海外に移住して5年を超えれば相続税の対象外となりましたが、今は、たとえ9年住んでいても日本の相続税が課されます。

 さらに15年7月に導入された国外転出時課税では、有価証券など1億円以上の金融資産を持っている人が海外に住所を移して出国する際や、海外にいる親族などに財産を贈与・相続する際に、その段階で資産が売却されたとみなして含み益に譲渡所得税を課するようになりました。日本国内での税負担が重いからと言って、資産を海外に自由に持ち出せるわけではないということです。

 これらの税務上の要件を満たせたとしても、住み慣れた日本を離れて生活が激変するという、移住最大のリスクは解消されません。他にも目的があるならともかく、税金対策のためだけに慣れない海外に10年間住み続けるのは非常に困難を伴います。もしも海外移住を検討するのなら、税負担だけではなく、家族を含めたライフプランまでをしっかり考慮した方がよさそうです。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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