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 相続税対策には生前贈与が有効とよく言われます。しかし、仮に1千万円の財産を子供に引き継ぐとして、控除などを抜きにするなら相続税の税率は10%となりますが、それに対して同じ額の生前贈与にかかる税率は30%になります。シンプルに税率だけを考えますと相続で渡すほうが得になるはずですが、なぜ生前贈与が相続対策に有効なのでしょうか。

 例えば父が亡くなり5億円の財産があったとします。法定相続人は子2人と仮定すると、差し引けるのが基礎控除額だけだと考えれば、2人が納めるべき相続税は合計1億5210万円となります。

 しかし、父が息子に1千万円を生前贈与していたら、その税額は177万円となり、その一方、相続税は1千万円遺産が減るのでそれを基に計算すると相続税額は1億4760万円となります。なんと贈与前より450万円の節税となります。贈与税の負担177万円差し引いても実質273万円の節税が可能になります。

 この謎を解くヒントは、相続税は亡くなった人の財産の総額に対して課税されることにあります。5億円の財産を持つ人の1千万円に係る相続税の税率は、実は10%ではなく実質的に45%に達することになります。その分が減るのですから税率30%の生前贈与を行っても結果的に節税になるというわけです。

 さらに生前贈与には様々な非課税ルールがあります。そもそも毎年110万円までの贈与には税金がかかりませんし、1500万円までの一括贈与が非課税になる教育資金の贈与特例などもあります。こうした優遇を活用することで、相続税対策としての生前贈与はますます効果が発揮されることになります。

 しかし、被相続人からその死亡前3年以内に贈与を受けた財産があるときには、贈与を受けた財産の贈与時の価額を相続税の課税価格に加算する生前贈与加算という制度がありますので、生前贈与される際には、なるだけ早い時期に対策を練られた方が賢明と言えます。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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