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 新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

 民法改正によって創設された「配偶者居住権」が、今年の4月以降の相続から適用されます。今日は遺産分割に大きな影響を与えるその財産評価について考えてみたいと思います。

 配偶者居住権とは、被相続人の配偶者が自宅の所有権を相続しなくてもその自宅に住み続けることができる権利のことをいいます。現行法上で家に確実に住み続けるには所有権ごと家を相続する必要がありますが、所有権を取得すると法定相続分の大半を家の価格が占めてしまい、生活の糧となる預貯金を少額しか受け取れないということが起こりえます。そこで所有権と配偶者居住権を切り離し、配偶者居住権という住む権利だけを取得することで、他の財産を多く受け取れるようにするというのが制度の趣旨となります。

 配偶者居住権の財産評価額は、配偶者の年齢に応じた平均余命の年数と、建物の居住年数などにより計算します。

 まずは、建物の配偶者居住権の相続税評価額の計算方法を解説します。

 計算方式としては、建物の相続税評価額から、配偶者居住権が設定された所有権の金額を引いた金額により計算します。配偶者居住権が設定された所有権の計算式は以下の通りとなります。

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 次に計算式中の用語について解説します。

 まずは自宅建物の相続税評価額ですが、これは、固定資産税評価額をそのまま使います。毎年5月か6月頃に自宅に届く固定資産税の紙に「評価額」と書いてある金額が、それです。

  1. 残存耐用年数とは、建物の構造に応じた法定耐用年数に5倍をして、自宅として使っていた場合の耐用年数を計算します。その耐用年数から、建築時から現在に至るまでの築年数を引き算して、算出します。一言でいえば残存耐用年数とは「その家は、耐用年数的に、あと何年住めそうですか?」という年数です。 
  2. 配偶者居住権の存続年数とは、「配偶者居住権を何年間、設定しましたか?」という年数です。配偶者居住権を何年間設定するかは、自由に決めることができます。「終身」を選択した場合、年齢と性別に応じた平均余命年数となります。「期間設定しました」という方は、その年数が配偶者居住権の設定期間になります。平均余命年数は厚生労働省が発表する完全生命表に基づいて計算します。
  3. 存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率は、一覧表の数値を使います。法定利率は3年に1度見直されます。2020年4月1日より法定利率は3%になります。

 

 配偶者居住権が設定された所有権を計算してマイナスになった場合は、ゼロとして扱います。そのようなときは、建物の評価額が、そのまま全額、配偶者居住権の評価額となります。

 

 次に土地の配偶者居住権の評価額について解説します。土地の場合にも、先に、配偶者居住権が設定された所有権の評価額を計算し、その金額を、土地の相続税評価額から引き算して、配偶者居住権の評価額を計算します。配偶者居住権が設定された所有権の計算式は、次の通り。

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土地は建物よりもいたってシンプルな計算式になります。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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