相続税関連
本来は申告の必要はありませんが、以下の特例を適用する場合は、申告義務があります。
1.小規模宅地等の評価減
2.配偶者に対する相続税の軽減
3.農地等にかかる相続税の納税猶予
「限定承認」あるいは「相続放棄」の手続きをとることによって、これを免れることができます。また、これらの手続きをしなければ、借金は全額、相続人が背負うことになります。
・限定承認とは
被相続人の正味財産は、マイナスだけれど、どうしても欲しい財産(絵画・書画・骨董等)がある場合は、相続があったことを知った日から3ヶ月以内に相続人全員で家庭裁判所に対して「限定承認」する旨を申述すれば、相続によって得た財産(絵画・書画・骨董等)の価額の範囲内でのみ債務を引き継ぐことになります。
・相続放棄とは
相続放棄は、相続があったことを知った日から3ヶ月以内に「相続放棄」する旨を家庭裁判所に申述すれば債務を引き継がなくて済みます。「限定承認」の場合と違って、各相続人が自由意思で単独で手続きできます。
相続に関する主な流れは次のようになります。
1.死亡届の提出(死亡後7日以内に市役所へ)
2.死体火・埋葬許可申請(死亡届と一緒に)
3.年金受給権者死亡届の提出(年金受給者が亡くなった場合、年金事務所又は年金相談センターへ)
4.介護保険資格喪失届(死亡後14日以内に市役所へ)
5.所得税の準確定申告(死亡後4ヵ月以内)
6.遺産分割協議書の作成
7、相続税の申告と納税(相続の開始があったことを知った日から10ヶ月以内)
8.遺産の名義変更
遺産分割協議書の形式は、特に法律で規定されておりません。
期限の定めもありませんが、相続税の申告が必要な方は、申告期限(相続の開始があったことを知った日から10ヶ月以内)までに申告書とともに所轄税務署長に提出しなければなりません。預金凍結を解除したり、相続登記したりする際にも必要になりますので少し多めに作っておいた方がいいでしょう。
遺産分割協議がまとまらなくても、申告書は期限内に提出しなければなりません。この場合、法定相続分に分割されたものと仮定して申告書を作成します。未分割の状態なので、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などの適用はできません。ただし、申告書とともに『申告期限後3年以内の分割見込書』を提出することによって遺産が後に分割されたときに納めすぎの税金を還付することができます。
共有登記は、あまりお勧めできません。それぞれの不動産を単独所有した方が、後々のトラブルを予防する意味で得策かと思います。仮に相続人3人で共有登記した場合、固定資産税も1/3ずつ負担し、その不動産(賃貸物件の場合)からあがる収入も1/3ずつ受け取ることになります。売却の場合は、相続人3人全員の同意が必要です。相続人3人が健在で仲が良い場合は問題は少ないかもしれません。しかし、相続人の内誰かが亡くなったような場合は、そうはいかなくなることがほとんどです。このような手法を使うと相続が起こる度に共有者の数が増えたり、血の繋がっていない人が共有者に入ってきたりする可能性が高くなるわけです。そうなるとトラブルになる可能性がより増してきます。
例えば生命保険を上手に活用すれば自宅を売却しなくてもスムーズに遺産分割が可能です。生命保険は換金性が高く、また受取人と受取額を予め指定できるため、計画的な生前対策手段として大変便利な金融商品なのです。仮に長男に自宅を相続させる場合、自宅の時価相当額程度の死亡保険金を受取人次男として契約しておくということが考えられます。また、受取人を長男として、長男が受取った死亡保険金を代償分割金の財源として次男に渡すという手も有効です。
代償分割とは特定の相続人が特定の遺産を分けてもらい、その代わり、その者の財産を他の相続人に与える分割方法をいいます。
相続税は被相続人の財産に対して課されるものですが、名義にとらわれず実質で判断されます。名義が被相続人のものではなくても、実質的に被相続人の財産と判断されるものは、必ず申告しなければなりません。特によく見られるケースは、被相続人が黙って贈与税の基礎控除額である110万円の預金を毎年配偶者や子供の名義で作るといったものです。名義は確かに相続人のものですが、この場合、贈与の要件にあたるかどうかが問題となります。贈与は、双務契約ですから、もらう側(受贈者)がもらった時点で贈与されたことを自覚しているということが成立の条件となります。
ポイントは、
(1)預金の出し入れ等の管理は誰がやっていたか?
(2)相続人(=名義人)本人はその預金の存在を知っていたか?
(3)銀行印は相続人のものか?
(4)通帳の保管場所はどこか?
(5)贈与税の申告はしたか?
(6)通帳の新規申込書は、相続人自身が署名したか?(筆跡は相続人のものか?)
といった点です。
これらの要件に当てはまらない場合は、贈与されたとは認められず、名義を貸したものとして相続税の課税対象財産となります
遺言があっても、相続人全員の合意があればこれと異なる遺産分割ができます。また、遺言が無い場合でも必ずしも法定相続分に従う必要はなく、相続人全員の合意で自由に分割することができます。
まずは、以下のようなものからだいたいの財産を把握するように努めましょう。
- 預貯金通帳(どんな定期収入・定期支出があったか等がわかります)
- 固定資産税納税通知書(所有する不動産の明細がわかります)
- 個人所得税申告書(収入の状況や保険加入の状況がわかります)
- 法人税申告書(会社に貸付金又は借入金があるか、退職金が支払われたかどうか、保有株式数等がわかります)
- 宝石・骨董品などの現物や鑑定書(家庭内財産の評価に使います)
- 領収書、請求書(相続開始時点での債務や貸付状況等の把握に使います)
- その他郵便物・名刺・手帳などで所有している有価証券・ゴルフ会員権などがあるかどうかの判断材料に使います。
次に、生前関与していた税理士や親しくしていた方がいたかどうかを調べ、該当者がいればその方に色々と生前の様子を聞き取りしたり相談したりしてみてください。
今回のご相談に対しては、お孫さんを養子にすることによる相続税対策のメリット・デメリット・注意点についてお答えしたいと思います。
養子の制度は、相続税法と民法で違いがあります。民法上では養子の人数に制限はありませんが、相続税法上は、法定相続人の養子の数に制限が加えられます。被相続人に実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなっております。
メリットについて
孫と養子縁組をすると法定相続人の数が増えるので、相続税の計算上、複数のメリットが生まれます。
まず、1人当たり600万円の『基礎控除額』が増えます。また、1人当たり500万円の『生命保険非課税枠』と『死亡退職金非課税枠』が広がります。さらに、相続税は、累進課税方式により、各相続人の法定相続分が減るため、全体的に税額が安くなることがあります。そして、孫を養子にすると、子の世代を飛ばして財産が相続されるため、相続税の課税回数を1回減らすことができます。
デメリットについて
相続人全員の合意が必要となる遺産分割協議では、協議が難航することがあります。ここでさらに養子が加わると、相続人の数が増え意見がまとまりづらくなる点が挙げられます。養子も実子も、相続人としては同じ立場になります。
お互いの権利を主張しあうことで、争いに発展してしまうことも考えられます。
また、養子縁組により相続人が増えたことによって、他の相続人の取り分が減ります。本来、もらえる分であった取り分が減ったことにより元々の相続人からの不満が出る可能性があります。
相続人が複数いる場合は、慎重に養子縁組を行うことをお勧めします。
そして、養子縁組を行い、相続発生後に少しでも揉めることが危惧されるのであれば、事前に遺言書等を遺しておいた方が、残された方々は揉めずに済むかもしれません。
被相続人の孫を養子にした場合には、実子としての扱いにはなりますが、相続税の計算時には孫は税金が2割加算になりますので、注意が必要です。
被相続人の一親等の血族及び、配偶者以外の者が、相続または遺贈によって財産を取得した場合、その人の相続税が2割加算になります。
民法上、養子は実子と同じく一親等として扱われますので通常は2割加算の対象とはなりませんが、例外として「孫養子」は2割加算の対象となるのです。
親族間で養子縁組を行う場合、孫を養子にする方もいらっしゃると思います。
この点を念頭に置いた上で、養子縁組を行ってください。
ただし、子(養子とした孫の親)が既に他界している場合には、子の地位を代襲するものとして2割加算の対象にはなりません。
○注意点について
養子にするには、婚姻届と同じような書類に記載するため、2名の証人が必要になります。普通養子縁組は、養親になる方と養子になる方、当人同士の同意があれば基本的には成立します。したがって、養親に他に実子がいた場合でも、その実子の知らないところで養子縁組を行うことも可能になるのです。
いざ相続が発生し、いきなり養子の存在が発覚して、さらに実子と養子の相続財産の取り分が一緒ということが分かったら、実子の方は少なからず困惑するでしょう。そのような相続発生後のトラブルを未然に防ぐためにも、養親になろうとお考えの方は、ご自身の相続発生時の利害関係者には養子縁組を行う旨をきちんと知らせ、できれば了承を得た上で行った方が、後々の紛争回避になります。
普通養子は、実親と養親の両親からの相続財産を受け取る権利がある反面、実親と養親どちらの親に対しても扶養義務が生じます。
財産をもらう時のことだけを考えるのではなく、親が働けなくなり収入が無くなった場合や、介護が必要になった場合には、面倒を見る義務が生じます。
財産を受け取る権利がある代わりに、扶養義務も果たさなければならないということをお含み置きください。
養子縁組を行った後に、養親と養子の関係が悪くなり、養子縁組を解消したいということになった場合、原則としてお互いの合意がないと解消はできません。
一方が解消を求めたとしても、合意されずにトラブルになった…という事例もありますので、縁組を行う際には、リスク等を踏まえた上で検討をしてから行ってください。
今回のご相談に対しては、「小規模宅地の特例」についての説明からおさらいしたいと思います。
「小規模宅地の特例」の適用を受ける土地には大きく分けて、事業用・居住用の2つにわけられますが、今回のご相談は、ご自宅ということなので、居住用の小規模宅地の特例についてご説明します。
一般的な御家庭を考えますと、相続における財産の中で「自宅」の割合はとても高くなります。自宅を相続するにあたって、相続税を支払うために自宅を売却せざるを得ないというのでは、住む場所を失う人がたくさん出てしまいます。そこで「自宅を相続税によって手放さない」ために、「自宅にかけられる相続税を低くする」ことが求められ、小規模宅地の特例ができました。
そこで、自宅などの宅地等についてはその処分の制約性等を斟酌配慮して、一定の要件を満たすと330平方メートルを限度に80%の評価減を認めるという小規模宅地の特例の規定が設けられています。
一般の個人住宅で小規模宅地等の特例を受けるには、「特定居住用宅地」に該当する必要があります。特定居住用宅地として認められるのは次の要件です。
A:相続人が配偶者の場合……条件はなし
B:相続人が同居の親族の場合……引き続きその住まいに住み続け、相続税の申告時期までその土地を所有していること
C:相続人が別居の親族の場合……被相続人に配偶者や同居の親族がいない場合で、かつ次の条件を満たすこと
C-1:被相続人の死亡前3年以内に日本国内にある本人又は本人の配偶者の持つ家(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます。)に住んだ事がないこと
C-2:被相続人が住んでいた宅地などを相続税の申告時期まで所有していること
このご相談の例でいえば、Bに該当しますが、この場合、小規模宅地等の特例が認められるのは、被相続人が居住用で使っていた土地です。しかし、相続開始前にその宅地に住んでいなくても、建設工事中の建物につき「居住の用に供されると認められる」と国税当局が判断する状態であれば評価減を受けられます。また、相続税の申告期限までに住んでいないときでも、建築工事に相当の期間を要するケースや、法令の規制で建築工事が遅延しているケースなど、やむを得ず建物の完成が遅延しているときは、小規模宅地の特例を適用できます。
私達息子夫婦も同じマンションの別の部屋を購入し住んでおりましたが、5年前、別の賃貸マンションに引っ越すことになり、その部屋は物置となっておりました。 特定居住用宅地等の要件には、同居していない親族は持家がないことが要件になると聞きましたが、持家があるので、小規模宅地等の特例の適用は受けられないのでしょうか。
今回のご相談につきましては、被相続人と同居していない相続人に持家がある場合についての小規模宅地の特例の適用判定についてお話します。特定居住用宅地等の要件は、取得者が被相続人と同居していない親族の場合、以下の①から③の全てに該当する場合で、かつ、次の④及び⑤の要件を満たす人でなければなりません。
① 相続開始の時において、被相続人若しくは相続人が日本国内に住所を有 していること、又は、相続人が日本国内に住所を有しない場合で日本国籍を有していること
② 被相続人に配偶者がいないこと
③ 被相続人に、相続開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた親族でその被相続人の相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)である人がいないこと
④ 相続開始前3年以内に日本国内にあるその人又はその人の配偶者の所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます。)に居住したことがないこと
⑤ その宅地等を相続税の申告期限まで有していること
④に「所有する家屋に居住したことがないこと」とありますので、マンションを所有していても居住していない場合には、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。申告時には、相続人であるお子様の住民票の写しや賃貸契約書等を添付して提出することになります。
今回のご相談につきましては、相続放棄の法的性格からご説明します。
相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続の放棄の申述を行った者は、その相続については、はじめから相続人とならなかったものとみなされます。したがって、このように相続を放棄した者が生命保険金、退職手当金等を取得した場合には、相続人以外の者が遺贈により取得したものとみなされ相続税の課税が行われます。遺贈とは、被相続人が遺言書を書くことによって遺言で相続財産を与える行為のことをいいます。
相続を放棄した者が遺贈により財産を取得した場合の相続税の計算においては、基礎控除、配偶者の相続税額の軽減等の規定は適用されますが、次の規定は適用されません。
- 生命保険金等及び退職手当金等に係る非課税金額
- 債務控除
- 相次相続控除
ただし、相続を放棄した者が現実に被相続人の葬式費用を負担した場合には、その負担額は、その者の遺贈によって取得した財産の価額から債務控除することができます。
母は父の遺族年金が主たる収入ですが、それだけでは足りず、預貯金を取り崩して生活しています。高齢なので何時相続が発生するか分かりませんが、私共の住む敷地部分について、小規模宅地等の特例の適用が受けられるかどうかアドバイスをお願いします。
今回のご相談につきましては、あなたがお母様と生計を一にしているかどうかによって扱いが全く異なることになります。
税理士の業務をしていると、「生計を一にする親族」と言うフレーズが良く出てきます。身近なところでは、所得税の医療費控除や扶養控除、雑損控除の適用要件などがこれに該当します。今回の案件についても、小規模宅地等の特例の適用判定でこのフレーズが出てきます。
適用の対象となる「特定居住用宅地等」の要件の一つに、
「被相続人と生計を一にしていた親族の居住の用に供されていた宅地等を、その親族が取得して申告期限まで継続保有し、且つ相続開始前から申告期限まで継続して自己の居住の用に供しているもの」というものがあります。
今回のご相談では、あなたが実家の敷地内にお母様から使用貸借で土地を借り、別棟を建ててご家族で住んでいるとのことなので、お母様とあなたの家族が「生計を一にしていた」場合には、小規模宅地の特例の適用が受けられ別生計では適用が受けられないことになります。
では「生計を一にする」とはどの様な場合を言うのでしょうか?
国税通則法基本通達には、
「互いに助け合って日常生活の資を共通していることをいう。同居していない場合でも、常に生活費等を扶助しているときはこれに該当する。同居していても、互いに独立して日常生活の資を共通していない場合は該当しない。」
とあります。これが全ての税科目に共通した、判断基準になります。
一方、所得税基本通達2-47には、「生計を一にする」の意義について次の様に示されています。
ⅰ)日常の起居を共にしていない場合でも、勤務や修学の余暇に起居を共にするのが常例であれば生計を一にするに該当
ⅱ)日常の起居を共にしていない場合でも、常に生活費や学資金を送金していれば生計を一にするに該当
ⅲ)同一の家屋に起居している場合には、明らかに独立した生計を営んでいると認められる場合を除き該当
では、設例についてはどう判断すれば良いでしょうか。
お話からすると、お母様の身の回りの面倒を見ることは有っても、日常生活の資を共通にしてはいない様です。実態から判断する限り、適用を受けるのは難しいのではないかと思います。
特例の適用を受けるために、事実に反し生計費や療養費の一部を負担していると強弁すれば、預金通帳等で金銭授受の事実を見せてくれと言われて説明に窮します。
所得税基本通達のⅰを根拠に主張することも考えられますが、明らかに独立した生活を営んでいたと認められる場合には生計一に該当しないとの取扱いになります。
税理士は、確定申告でこの辺りの判断を迫られます。
夫は、4 年ほど前から認知症になり、私が献身的な介護をし続けてきました。夫の遺産は、都内のマンション(時価約4,000 万円)と預金6,000 万円です。夫には、子どもも兄弟もおらず、親も既に亡くなっております。
通常の夫婦であれば、妻である私が遺産を相続することになりますが、私と夫は、20 年以上連れ添ってきましたが、事情があり、籍は入れておりませんでした。いわゆる内縁関係です。内縁の妻である私には夫の遺産を相続する権利がないことは知っていました。しかし、私は、判断能力がなくなった夫の後見人になり、生活だけでなく夫の財産も管理してきたのです。本当に遺産が1 円も手に入らないと、収入が全くない私は、今後の生活ができずに困ってしまいます。本当に私は、この遺産を相続できないのでしょうか?
今回のご相談につきまして、結論からいわしていただくと、どんなに献身的な介護をしていても、後見人として財産管理をしていても、内縁の妻に相続権はございません。別居をしていても戸籍上の妻には相続権があるのに、実態として「妻」だったとしても、内縁の妻には一切相続権がないなんて、本当にひどい話だと思いますが……。
さて、子どもも正式な妻もいない夫の相続人は、第1順位が親、第2 順位が兄弟、兄弟が亡くなっていたら甥姪、となるのですが、夫は一人っ子とのこと。相続する人が誰もいません。相続人が誰もいなかった場合、相続財産は「国庫」に帰属してしまうので、1億円もの遺産が国庫収入となってしまいます。ただ、相続人が誰もいなかった場合、あなたのように亡くなった方と「特別な縁」があった人は、相続財産を分けてもらうように請求できる制度があります。これを「特別縁故者に対する財産分与の申立て」と言います。
しかし、特別縁故者に対する財産分与の申立てをしても、特別縁故者に対する財産分与は、裁判所が決めた金額までしか分けてもらえません。
実際に似たケースでは、裁判所の判断により3,000 万円しか財産分与を認めてくれず、残り約7,000万円は国庫に帰属となってしまった事例があります。
家族同然のペットですが、最近になってふと、自分が居なくなったら我が家のペットはどうなってしまうのだろうと考えるようになりました。娘が一人おりますが、現在ペット飼育禁止のマンションに住んでおり娘に頼むわけにもいかない状況です。幸い老後の為に貯めておいた預貯金や自宅を売却すればある程度の金額にはなりそうです。これを、可愛いペットの為に残してやることは出来ないでしょうか?
今回のご相談の件ですが、例えば、あなたが、家族同然の大切なペットに、自分の財産を全てあげたいと思っても、犬や猫などのペットは法律上権利義務の主体にはなれません。ですから、いくら遺言書で自分の財産を全てペットに遺贈すると書いてもそれが実現されることはありません。
では、どうすれば家族同然のペットを自分の死後守ってあげる事が出来るのでしょうか?まず、民法の規定する、負担付遺贈や死因贈与、生前贈与などの方法で親族や信頼出来る第三者に大切なペットの行く末を託す事が考えられますが、「贈与」の場合は遺贈者と受遺者の間で「契約(贈与契約)」を結ぶことになりますので、そもそも相手が承諾するかどうかで契約そのものの成否が問題になりますし、もし贈与契約が成立しても、あなたの死後、本当に贈与財産がペットの為に使われるかどうかの保証はありません。
また、「遺贈」の場合は遺贈者の「一方的な意思」で成立しますが、実際には受遺者に拒否されてしまったり、法定相続人の遺留分などへの配慮が無い遺贈になっていたりするとそれが争いの原因になり、結局ペットは行き場を失ってしまうという事も考えられます。
そんな時に活用したいのが、家族信託の仕組みです。あなたの死後もペットを守る信託スキームを組成しておく事により、ペットのために遺したい財産と、それ以外の相続財産を切り分ける事が可能になります。例えば、ご本人がお元気な内に、信託財産の管理団体として一般社団法人などを設立します。そして、ペットの為に残したい財産をその社団の信託口座に入金し、自分が入院などで動けなくなった場合や、自分の死後もそこから新しい飼い主にペットの飼育費用が支払われるような仕組みを創ることが出来ます。また、信託を組成した行政書士や司法書士などの専門家に信託監督人を依頼して適切にペットの飼育が実行されているかをチェックする事も可能です。
ところがある日突然、夫と内縁関係にあったという女性とその子供が会社に現れ、子供の認知と夫の財産の相続権を要求しだしたのです。夫にその事情を問いただすと、その女性とは親密な付き合いがあったことは認めましたが、かなり前に別れており、子供の存在も知りませんでした。その子供は、確かに夫の子供であり、どうやら認知を逃れることはできないようです。もし夫に万が一のことがあった時には、会社はどうなるのか教えていただけませんでしょうか?
A.今回のご相談について、少し論点を整理してみましょう。
① 内縁関係の女性の相続権
内縁関係にある女性については、婚姻関係にありませんので相続人とは
なり得ません。つまり相続権はありません。
② その女性との間に産まれた子供の相続権
その子供は、あなたの夫が「認知」をして初めて「非嫡出子」として相続人となります。「認知」については、婚姻関係がない場合には、父親が「間違いなく自分の子である」と認めて初めて父子関係が成立します。なお、正式に婚姻関係のある夫婦の間に産まれた子供を「嫡出子」といい、これに対して法律上の婚姻関係のない男女の間に産まれた子供を「非嫡出子」といいます。つまり、あなたの夫に何かあった時の相続権は、妻(法定相続分:1/2)、妻との子(法定相続分:1/4)、新たに認知した子(法定相続分:1/4)の3人にあります。
平成25年12月4日に成立した改正民法では、非嫡出子に対する相続差別の解消を目的として、民法900条4項から「非嫡出子の法定相続分は嫡出子の2分の1」という規定が削除されました。つまり平成25年9月5日以後の相続からは、嫡出子も非嫡出子も平等の相続権を持つようになったのです。(平成25年9月4日前でしたらこの場合、妻の子の法定相続分は1/3、認知した子の法定相続分は1/6となります)
③ 隠し子への対策
今のままですと、会社の株について相続が発生した際にあなたの夫の所有している株式数の25%である法定相続分の所有権を請求してくるかもしれません。
議決権と株主の主な権利は以下の通りです。
■ 1株以上 各種書類の閲覧権等
■ 総株主の議決権3%以上 会計帳簿の閲覧権等
■ 総株主の議決権1/3超 特別決議の阻止
■ 総株主の議決権1/2超 経営権の取得、役員派遣
■ 総株主の議決権2/3超 特別決議の成立
仮に法定相続分の割合で相続がなされるとすると、あなたの夫が100%の会社の株をお持ちの場合、総株主の25%の株が隠し子にわたり、あなたが保有するであろう50%の株と実子が保有するであろう25%の株では、経営に対する意見が割れた際に、隠し子の影響を受けざるを得ません。
相続時のトラブルを避けるために以下のような事前対策をしておくべきでしょう。
① 認知をしておく
むしろ積極的に認知を行い、そのうえで相続などの準備を行っておく方が結果的にもめる危険性は低くなると考えられます。
② 遺言書を残しておく
夫が亡くなる前に遺言書を作成しておき、財産の分割方法を指定することによって、遺産トラブルを避けることができます。特に遺言で指定した相続分は法定相続分より優先されますので、非嫡出子の相続権を法定相続分の半分(遺留分:この場合1/8)に制限することも可能です。
③ 専門家にあらかじめ相談する
会社の基盤を揺るがしかねない議決権の行使を使わせない方法として、事業承継する方(例えば工場長の息子さん)を決めて、事業承継税制(非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度)により、後継者へ夫がもつ株式の移転を生前に進めておく。なにはともあれ、事前に専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
しかし、最近体の調子が悪く、一人での生活に不安があり、できれば今後24時間看護師常勤の有料老人ホームに入ることも検討しております。その原資として賃貸アパートの売却を考えております。この場合、公正証書遺言を撤回しなければならないのでしょうか?
今回のご相談について、結論を先に言えば、遺言を撤回しなくても売却できることになります。
遺言書に書いた財産を売却した場合、遺言書のその部分については、売却された事実をもって自動的に撤回されたものとみなされます。遺言のほかの部分には影響を与えません。
この場合、問題点として考えられるのは、推定相続人の間に不公平感が生まれてしまうということだと思います。
このままだとお子様の兄弟間で遺留分をめぐってもめてしまう可能性があります。
この不公平感を是正するには、遺言書の撤回・変更をするか、あるいは、次男さんに生前贈与等で手当てをしておくことが考えられます。
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