贈与税の課税根拠は、相続税の負担を免れた生前贈与等に対して課税措置を講じて、相続人間に生じる不公平を防止することといわれています。私も、仙台での税理士受験時代に贈与税は相続税の補完税であると記憶しておりました。
相続税は、相続開始の時点で存在する財産について課税されます。もちろん、課税対象となる財産の金額が大きければ大きいほど相続税の金額は高くなります。
だとすると、相続税の課税が予定されるとわかれば、相続税の負担をできるだけ減らすために、生きているうちに財産を全て配偶者や子(将来の相続人等)に分け与えてしまおうという人が出てきてもおかしくはありません。
これでは、このような生前贈与をした人としていない人とで、相続税の負担に大きな不平等が生じ、また、相続税が課せられる趣旨が没却されてしまいます。
そこで、生前贈与され、相続税が課税されない財産について、贈与税を課すことで相続税を補完しようということなのです。これが、贈与税は相続税の補完税たる所以です。
しかし、『税金を納めた後の金を誰にくれようとその人の勝手じゃないの?なんで課税されなきゃなんないの?』って思うのが普通だとは思うのですけれど…。
成功者には、富が集中し、それに対しては、所得税では、超過累進税率として高い税率を課しています。つまり残りの財産に対しては、どのように使おうとその人の自由であります。しかし、第2話の相続税の課税根拠を認めてしまうと、当然、補完税たる贈与税の課税根拠も認められてしまいます。
あげくにこの贈与税って税金は、税金の中でも高い税率で知られています。
お国は国民から税金を徴収してはじめて財政が成り立ちますので、国民のお金の動きをなるべく把握しておきたいのです。不動産を登記したり、車を登録したりすると、財産の流れが一目瞭然なので、こちらから税務署へ届けなくても勝手に納税通知書が送られてきます。無視すると督促状まできます。
相続も、被相続人の死亡が役所へ届けられ、死亡の日時点で遺産額が確定されますので、税務署も把握がしやすい。
しかし、贈与は、個人間でなされるので、届出がない限り税務署は把握が出来ないのです。
不動産や自動車は登記登録がされればわかりますが、現金や動産類は贈与されてもまったくというほどわかりません。
そこで国は贈与に税金がかかるようにして、しかも税率を高額にしています。贈与したら損ですよ、と訴えて、相続開始前に税務署の知らないところで国民の財産が動くのを阻止しようとしているのです。
そう考えると贈与税が高いのも仕方がないかな・・・と少しは納得がいきませんか?
ただし最近は、贈与税が高額なために国民の資産が流動しないことが、景気の減退に影響を与えるということがいわれてきまして、制限付きではあるものの、親が生前に子に資産を移すことを推奨してきています。
相続時清算課税制度を利用すれば、贈与しても2,500万円(または3,500万円)までが実質非課税です。(相続税の課税世帯は除きます。)
税金から逃れることは出来ませんので、お国の政策をうまく利用するのが得策とおもいます。