今年の仙台の夏は、よく雨が降ります。雨の日は、依頼を受けている相続税の申告書作成に没頭するのが我が税理士事務所の習慣です。そこに昼にテレビで配偶者控除に関するニュースがながれてきました。どういう内容かというと…
国会では、『女性の就労意欲をそいでいる』として、配偶者(特別)控除の見直しの動きが出ています。安部総理は、『これからの時代は女性が働きやすい時代になる』といっていますから、この配偶者控除をなくして103万円の壁を撤廃すれば、女性が年収を気にせずに働ける、その結果、景気も良くなるという事らしいです。
ところで、この『103万円の壁』とは如何なるものでしょうか?
所得税では『103万円の壁』、住民税では『100万円の壁』といわれているものがあります。
まずは、所得税についてご説明します。一般のサラリーマン世帯を考えてみますと、共稼ぎ世帯の数は、1,000万を超え、年々増加しております。このサラリーマンの妻が、パートで稼ぐ年収が103万円を超えてしまうと、夫の所得から配偶者控除という所得控除を受けることができなくなります。控除額は、38万円(配偶者の年齢が70歳以上の方は48万円)です。また、配偶者自身が、夫の扶養から外れ、税金がかけられる可能性も出てきます。しかし、この基準にならって家族手当の支給としている会社が多くあることのほうが問題なのかもしれません。
一方、住民税では、非課税限度額というものがあり、年収100万円以下の場合は、均等割を含め住民税は一切かかりません。つまり、所得税も住民税もかからず、源泉徴収されている場合は、年末調整で全額戻ることになります。
今までは、『税金の壁』についてお話してきましたが、少し『社会保険の壁』についても触れたいと思います。
妻のパート年収が130万円を超えてしまうと、たとえパートであっても社会保険に加入する必要が出てきます。つまり社会保険料の支払いが発生し、夫の扶養から外れなければならなくなります。仮に130万円未満であれば、健康保険料の支払い負担もなく、また国民年金では第3号被保険者となりますので、こちらも保険料の負担をしなくても、老齢年金を受け取れます。さらに、『130万円の壁』を越えてしまうと、年収は増えるのに社会保険料の負担がかかりますので、夫婦の総手取り額が減ることになります。これを避けるために、130万円を超えないように働いている方が多いのが現状です。
しかし、2016年10月から、パートタイマーの厚生年金の加入条件が変わることになりました。「社会保険の壁」の壁が低くなり、106万円の壁となります。現在の社会保険の加入要件は週の労働時間で決まりますが、法改正により、週の労働時間だけでなく、106万円の年収も加入要件に追加されます。
つまり、130万円の壁とは、夫の社会保険の被扶養者になるための要件ですが、106万円の壁ができるということは、妻本人が社会保険に加入するための条件が緩和され、妻の年収が106万円を超えると妻自身が社会保険に加入しなければならなくなるため、夫の社会保険の被扶養者から外れてしまうということです。
当面は、従業員数501人以上の大きな企業に1年以上勤務する人に限られますが、国は対象を拡大する予定だそうです。
税金の世界もこの改正の波に無関係ではいられないような気がします。