先日、仙台TOHOシネマで『後妻業の女』を観てきました。
私、後妻業について誤解をしておりました。第5話で、犯罪まがいの行いを後妻業といっていましたが、遺産を得るために殺人あり、詐偽ありの犯罪行為そのものを行うことを後妻業というみたいです。後妻を生業とするためには、犯罪行為はかかせないということですかね。そういえば、京都で夫に青酸化合物を飲ませて遺産の総取りを狙った連続殺人の事件を思い出します。
ストーリーを掻い摘んでいえば、主人公の小夜子は、結婚相談所で効率的に相手を見つけ、次々に殺して遺産を自分のものにしていくというもの。もちろん、被相続人を故意に殺して刑に処せられれば、相続権は失われます。結婚相談所所長の柏木と組んで、完全犯罪を狙った殺人を行っていきます。次女の朋美は探偵の本多を使って相続欠格事由にあたる事実を掴んでいきます。こういったケースでは、たとえ遺言で全財産を後妻に遺すと書かれていても、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人で直系卑属、直系尊属又は配偶者(遺留分権利者)であれば、遺留分の減殺請求ができます。最後の最後に小夜子が書かせた公正証書遺言の日付の後の遺言状がみつかり、事なきを得ます。この時に弁護士に電話口で開封したらいけないと怒鳴られていましたが、これについてもご説明します。遺言状には、公正証書遺言のほかに自筆証書遺言というものがあります。自筆証書というものは、これは遺言を作成される方が全ての文章を自分で書き、日付もまた自分で書き、最後に自分のお名前を自署署名ですね、これをして押印する、これによって成立する遺言ですけれども、この遺言書は本来、家庭裁判所で検認手続きを経なければならないのです。そしてまた、封印のされている封書、それに入っている遺言書は、家庭裁判所で開封しなければならないとされています。ですから弁護士がそのように叫んだのですね。けれど、仮に検認手続きを経なかった、あるいは検認手続きを経ないで開封したからといって、直ちに遺言が無効になるというものではありません。自筆証書遺言は、さきほど申し上げましたように、その全文、全部の文章、あるいは日付、これらを自分で書いて、署名、押印がなされていれば、一応、それで形式的な要件を整えます。そして、そのような形式的要件を備えた遺言書が、その遺言をした方の正常な判断能力を有した状態で書かれているかどうかというのがその有効要件、効力要件なのです。これらが備わっていれば、有効と考えてよろしいわけです。検認手続きを経ないからといって、直ちに無効になるものではありません。
正直残念ですが、税理士の本業である相続税の実務の情報には、あまり役に立つものはなく、笑えるコミカルな映画でした。