実際、仙台でも共働きのご家庭で夫婦それぞれがお金を出し合ってマイホームを購入するというケースが増えてきています。この場合、住宅は「夫婦共有名義」となります。夫婦共有は購入時にそれぞれが出すお金の割合に応じて所有権の持ち分というものを登記するということになります。今回は住宅購入時に名義を夫婦共有名義とするメリットとそのデメリットについてふれたいと思います。
共有名義にするメリットは「税制上の優遇を2重に受けられる」という点が最も大きいことだといえます。これには「住宅ローン控除」と「住宅売却時の3000万円の特別控除」という制度があります。
「住宅ローン控除」とは、簡単に言えば、住宅ローン残高の1%が税額控除できる仕組みです。この税額控除は夫婦それぞれが、それぞれの住宅ローンの残高に対して利用できます。平成28年現在、住宅ローン控除は最高4,000万円の1%が減税対象となります(40万円の減税)。ただし、所得によっては40万円も所得税(住民税)を払っていないケースもあります。共働きである夫婦の場合、そのようなときには、共有名義を生かして、夫婦それぞれが、住宅ローン減税を受けることにより、結果的に世帯全体の税負担を大きく減らすことができる場合があります。ただ、将来的に妻が出産などで仕事をやめたり、扶養の範囲内で働くようになったりするなど働き方が変わってしまうと、それによって住宅ローン控除が使えなくなるという可能性もありますのでこの点は注意が必要になります。
次に「住宅売却時の3000万円の特別控除」という制度ですが、これは、マイホームを売却する時の譲渡益に対する「3000万円の特別控除」も共有名義の場合は「それぞれに3,000万円」の控除枠が付く為、高額な物件の売買の場合などに税メリットが生じることがあります。単独名義だと、住宅の売却で3000万円以上の利益が出た場合に税金がかかりますが、夫婦共有名義だと6000万円までは税金がかからなくなります。
共有名義にするデメリットは、一つは配偶者の退職、もう一つは離婚によるものです。
配偶者が仕事をやめて妻のローンを夫が立て替えて支払っていくというような場合には注意が必要です。以前お話ししたようにローン返済が「妻への贈与」とみなされるからです。このような場合には、妻が会社を退職した時点で登記を変更することもできます。ただし、登記には登記費用や登録免許税などがかかりますし、それを専門家に依頼する場合にはその費用もかかります。
しかしもっともトラブルとなるのは離婚時でしょう。
共有名義の住宅はそれぞれの資産ですが、それを物理的に分割してそれぞれが住むというわけにはいきません。どちらかが住んで、もう片方は出ていく。あるいは売却してその売却代金を持ち分に応じて分割するという形になります。
問題は住宅購入から時間がたっていない状況で離婚に至るようなケース。そうしたケースでは住宅ローンの返済が進んでいないことも多くトラブルになりがちです。
共有名義となったままで、(元)夫が家を出たとします。家を売却するには共有名義だと「(元)夫と妻」の両方の承諾が必要となります。その時、(元)夫と連絡がつかなければ売るに売れない状況となります。
さらに共有名義者が死亡した場合には相続した人に持ち分が移動してさらに厄介なことになります。離婚しているので、遺贈されない限り、相続税には関係してきませんが、いざその物件を売却したい時に、元配偶者の親族と話し合わないといけないなんてぞっとしませんか?何を言われるかわかったものではありません。
じゃあ、共有名義を解消しておけばいいじゃないか?と思われるかもしれませんが、そうはいかないケースが多いのです。それは「銀行が承諾しない」からです。
名義の変更はローン契約も変更となります。特に年収が少ない人に名義が移るような場合は名義変更を断られてしまうことが多いのです。
このようなこともあり、名義は変更せずそのまま片方が住み続けてトラブルになるというケースがあるのです。
つい、「行きはよいよい帰りはこわい」の『とおりゃんせ』のわらべ歌を思い出してしまいました。税理士らしくありませんね。