第14話で、お話したテニス全米オープンの男子シングルスで大活躍した錦織圭選手に準優勝の賞金が145万ドル(約1億5000万円)と高額なことも話題になりましたが、さらにスポンサーからボーナスとして1億円が支払われることになりました。仙台の実母も非常に喜んでおります。ボーナスを支払ったのは、錦織選手とスポンサー契約を結んでいる「ユニクロ」のファーストリテイリング社と柳井正会長だそうで、大会でユニクロのウェアを着て対戦し、ブランド価値を高めた貢献をたたえて、同社と柳井会長が5000万円ずつ支払うということです。これが企業から従業員へのボーナスなら、所得税がかかったり、健康保険や厚生年金などの保険料が引かれたりしますが、スポンサーと契約選手の場合には、税金が源泉徴収されます。一方で、通常の会社員のボーナスのように、社会保険料を引かれることはありません。ただ、錦織選手はアメリカのフロリダ州に住んでいます。日米租税条約の特典が適用され、日本では源泉徴収されずに、5000万円をそのまま受け取ることになると思われます。しかし、アメリカで、この収入や賞金などについて、まとめて確定申告をしなければなりません。
それと柳井会長個人からもらった5000万円につきましては、これは、ボーナスというよりプレゼントですから、贈与税の対象となります。贈与税の場合は、『贈り主』の居住地が問題となります。今回は、日本に住んでいる柳井会長からのプレゼントとなると、送られた当人がアメリカ在住であっても、錦織選手は、日本で贈与税を納めなければなりません。これについては、米国で再び、贈与税が課せられることはありません。ただし、現在の日本の贈与税の最高税率55%が適用されますので、せっかくのプレゼントもほぼ半分に減ってしまいます。日本国民の立場からすると、ここは錦織選手の頑張りが私たちの生活を支えてくれていると考えて、錦織選手に感謝の言葉を述べるべきだといえそうです。税理士として錦織圭選手を通して、海外で活躍されている日本国籍の方々の所得税、相続税、贈与税の課税関係についてご説明してきました。ご理解いただけたでしょうか。