今日、お客様の相続税申告の案件で、仙台の街中を歩いているとジャズの音楽が流れてきました。そういえば、今日は、定禅寺ストリートジャズフェスティバルの日です。
定禅寺ストリートジャズフェスティバルin仙台は、1991年にスタートした、市民ボランティアが中心となって運営される無料の野外音楽祭です。
定禅寺通りを中心に勾当台公園、一番町、西公園、青葉通り、仙台駅と仙台市中心部各所をステージにプロ・アマを問わない様々なジャンルの音楽を楽しむ事ができます。
名称にJAZZと入っていますが、音楽のジャンルは問わないようです。(但し各会場・ステージ毎にある程度のジャンル分けはされているようですので、自分の音楽の好みに合った会場を選択する事ができます。)
2日間で70万人を越える人出があるといわれていまして、秋の仙台を彩る一大音楽イベントとして成長を続けています。
ということで、今日は一時に得をした気分になったので。一時所得についてのお話をしたいと思います。
第13話で、賞金などは所得税法上「一時所得」に分類されると書きましたが、これについてもう少し深く掘り下げてみたいと思います。
所得税法では、納税者の担税力に応じた課税をするために、所得をその性質に応じ10種類に区分することとしております。
簡単に書きますと、利子所得(預貯金などの利子)、配当所得(株式配当など)、不動産所得(不動産の貸付)、事業所得(事業による所得)、給与所得(給料・ボーナスなど)、退職所得(退職金など)、山林所得(山林の伐採)、譲渡所得(不動産や物の譲渡)、一時所得(賞金など)、雑所得(それ以外の所得)に区分されます。
その中の一時所得につきましては、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいうものとされております。
そしてその計算式は。一時に得た収入金額からその収入を得るために直接に支出した金額を引いて最高50万円の特別控除を引いた金額となります。この所得金額の半分が総所得金額に算入されることになります。
そういえば、最高裁にて平成27年3月10日に次のような判決がおりました。
事件のあらましは以下の通り。
被告は2007年から2009年にかけて、独自の予想ソフトで買い目を抽出し、インターネット経由でパソコンによる自動購入を繰り返した。3年間で計約28億7000万円の馬券を購入し、払戻金は約30億1000万円。黒字額は約1億4000万円にのぼった。だが大阪国税局は、払戻金から当たり馬券の購入額のみを差し引いた約28億8000万円が利益にあたるとし、約5億7000万円を脱税したとして大阪地裁に告発したのである。これに対して被告は、実際に得た利益をはるかに上回る額を課税されてはたまらないと主張し、刑事と民事の双方で争った。平成26年5月9日、大阪高裁は被告がはずれ馬券の購入に使ったお金についても必要経費になると認めた。検察側は判決を不服として最高裁に上告。最高裁は、競馬の馬券の払戻金はその払戻金を受けた者の馬券購入行為の態様や規模等によっては、一時所得ではなく雑所得に該当する場合があり、その場合においては、はずれ馬券も所得金額の計算上控除すべき旨判示した。
一時所得では、計算においてその収入を得るために直接に支出した金額しか引けないので、大阪国税局は、これを当たり馬券の購入額しか経費を認めない立場をとったということ。
最高裁は、この所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として一時所得ではなく雑所得として、はずれ馬券の経費性を認めたのであります。
税理士の立場からよくよく考えると当たり前の判決ですよね。常識で考えて、これを一時所得として課税するという立場は、頭が固すぎるお役所の考えとしかいいようがない。利益以上の税金を払えとはよくいったものです。
この最高裁の判決を受け、所得税基本通達34-1の一部に以下の部分が追加されました。
1馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用して独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有することが客観的に明らかである場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当する。
2 上記1以外の場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、一時所得に該当することに留意する。
今回のようにはずれ馬券に経費性を認めるのは、ほとんど稀なケースであることがよくわかりますね。