仙台の税理士事務所において新聞を開くとドナルド・トランプ氏に関する記事が目に飛び込んできました。
米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏が1995年に所得税申告で9億1600万ドル(約930億円)の損失を計上して、そのためにその後20年近くも合法的に納税を免税されていたと、米紙ニューヨーク・タイムズが10月1日に報じました。
米大統領選の慣習として候補者は納税記録を公開して所得の透明性を示しておりましたが、トランプ氏は納税申告書の公開をかたくなに拒んでいるため、ニューヨーク・タイムズの報道は重要な意味を持ってきます。
ニューヨーク・タイムズによれば、トランプ氏の未公開の1995年の納税申告書には同氏が、アトランティックシティに建設したカジノ3軒の経営の失敗や、ニューヨーク・マンハッタンのプラザホテルのタイミングの悪かった買収などで、1990年代初めに膨大な資金難に陥ったことによる損失から「多大な税制優遇」を受けていたことが示されております。
トランプ氏の1995年以降の課税所得は不明ですが、ニューヨーク・タイムズによれば「1995年に計上した9億1600万ドル(約930億円)の損失によって、その後18年にわたって年間5000万ドル(約50億7000万円)以上の課税所得が免税扱いされていた計算になる」といいます。
そもそも日本では、法人税法、所得税法、相続税法等の別個の税法により、それぞれの税金が規定されておりますが、アメリカでは、ひとつの税法典である内国歳入法によりそれぞれの税金が規定されています。
その内国歳入法によりますとその年度に生じた欠損金においては、前年において繰戻しできる期間を2年、また繰越して控除できる期間を20年と定めております。これが日本ですと、所得税におきましては、青色申告を条件に、繰戻期間が1年、また繰越して控除できる期間が3年となっております。
一方、日米では、相続税について考え方が大きく違います。
日本の相続税は相続財産を受け継いだ人「相続人」が納税義務者となり、相続人間でその受け継いだ財産の額に応じた配分で相続税を納税することになります。ところがアメリカではその名称も相続税とは言わずに遺産税といい、遺産を残した人(亡くなった方)が税金を払います。遺産総額からまず最初に遺産税を差し引き、その残りを相続人が相続する流れになっています。
しかし、そうはいっても亡くなった方が納税することは不可能ですから、実際には亡くなった方の代わりに裁判所から任命を受けた遺産管理人が納税手続きを行うことになります。