朴大統領が国家機密を親友の崔順実(チェ・スンシル)氏に伝えていたとされる情報流出事件の波紋が広がっています。
世論調査の支持率は5%以下に低迷するなど、任期終盤を迎えてレームダックへと陥り最大の危機を迎えた朴大統領ですが、頼るべき友人が事件の火種として逮捕されてしまっただけに相談する相手すらいない状況です。
窮地に陥った朴槿恵政権に対し、米国は「韓国の内政には干渉しない」と冷たい対応を見せています。友人が逮捕され、同盟国にも見捨てられた朴大統領…。
しかし政治の世界よりもっと深刻なのは韓国経済なのかもしれません。
もともと韓国経済は、財閥系企業で成り立っており、十代財閥をあわせるとGDPの70パーセント以上、サムソン電子だけでGDPの20パーセントを稼いでいます。また、財閥系企業の株主の多くは外資であるという特徴があります。歴代政権はこれまで財閥を重視、優遇することで経済成長を果たしてきました。
サムスンや現代自動車は、ウォン安を最大限活用し、世界中で安価な商品を売りまくってきました。しかし、ウォン高となり輸出競争力は大幅ダウン。「安価」というメッキが剥がれ、業績低迷に歯止めがかかりません。韓国経済はもともと「内需が小さく、輸出頼み」の構造なのです。
携帯電話機、自動車、造船、石油化学、半導体、ディスプレー、石油製品、鉄鋼――。この8品目は10年前も今も韓国の主力輸出製品です。これら8品目は、10年前は、日本製より安く、中国製より高品質でした。今現在、中国が製造し輸出できるようになった分野では、韓国製品がどんどん不要になっている構図になっております。2018年にはスマートフォン、液晶パネルなど、自動車と半導体を除くほぼすべての韓国の主力輸出品目が中国に追いつかれるか、追い越されると予想されています。
一方、税制面ですが、課税捕捉という面では、日本より韓国の方が数段進んでおります。
韓国の税制を理解するうえでとても重要なのは日本の消費税にあたる付加価値税制です。法人税や所得税など他の税目に関しては、基本的な体系は日本のものと類似しています
が、消費税の申告システムに大きな違いがあります。韓国の付加価値税は1977年に税率10%で導入され、それ以降国税収入の1/3程度を占め続けています。税収額においても韓国税制の中心なのですが、その電子申告データを基に、法人税、所得税などの課税捕捉が瞬時に行われるなどの点でも、その中心的役割を果たしているといえます。課税期間は1月~6月と7月~12月の年2期で、課税期間終了後、なんと25日以内に申告納付をしなければなりません。
① 住民登録制度を活用した事業者登録番号
韓国では事業者登録番号(納税者番号)として、 全国民に出生時から付与されている住民登録番号が活用されています。住民登録番号は、契約の際の本人確認、クレジットカードの作成、WEBサイトでの会員登録、登記手続きなど、事業や生活のあらゆる場面で必要になる番号です。十指の指紋も登録され犯罪捜査の際に活用されることもあります。事業者はこの番号を基に事業者登録を行い、売上と仕入の取引すべてに定型の「税金計算書」というインボイスを作成しこの番号を記載することが義務付けられています。
② クレジットカードと現金領収書
給与所得者がクレジットカードで買い物をすると その金額に応じて所得控除が受けられるという制度 があります。消費者向けの現金売上の漏れを補足するために設けられた制度で、カード会社を通じて事業者の売上が把握されます。また、現金で買い物をする場合にも国税庁が形を定めた「現金領収書」を受け取り、所得控除を受けることもできます。事業者に対してはカード決済又は「現金領収書」の発行が義務付けられております。
③ 付加価値税と電子申告制度
韓国では課税捕捉率(今は75%程度と言われている)を高め、税務調査を減らすために、付加価値税のインボイス方式と電子申告制度がフルに活用されています。日本の電子申告率は50%~60%で、韓国では付加価値税が75%、法人税に関しては90%を超えています。この数字以上に日本の電子申告制度との決定的な違いは、韓国では所得や税額等の申告書記載内容のみならず、全取引のインボイスデータを送信するという点にあり、国税庁はお金の動きを細部に渡るまで把握することができるのです。
④ 会計事務所の仕事の多くは付加価値税電子申告の事務作業
インボイス方式による電子申告は良い側面ばかりではありません。売上仕入の全てに「税金計算書」を作成しなければならず、更にそのデータをインプットして国税庁へ送信するという膨大な事務作業が 必要になってくるのです。結果的にその事務作業の担い手は税務士(日本では税理士の立場)となり、韓国の会計事務所の職員は日々このインプット作業に追われています。そして このインプット作業は、事業者のすべての売上仕入の明細をまとめ上げる作業なので、そのまま法人税や所得税の申告に連動してくるのです。