小雨が続く仙台です。晴れかと思いきや小雨が降ってきます。洗濯物が乾きません…。
今日は、気分を変えて久しぶりに相続税対策のお話をしたいと思います。
相続税対策とひとことでいっても、その方法には様々なものがあります。その代表的なものとして養子縁組を活用する方法があります。
家族のために多くの財産を残すことが相続税対策なのになぜ家族を増やすのか?相続税を減らすことを目的に家族を増やすのは、本末転倒な話に聞こえます。
しかし最近、芸能人などの資産家を中心に、養子縁組を活用した相続税対策を利用するケースが増えてきています。養子縁組は税負担を大幅に軽減できることに加え、残したい人に確実に遺産を渡せるのが強みですが、反面、法定相続人が増えることにはトラブルのリスクも付きまといます。
2014年11月にこの世を去った俳優の高倉健さんは、33歳年下の知人女性を養子にしていたことが明らかになりました。女性は、病床の健さんの介護を一人で行っていたといわれ「長年お世話になった人に財産を残してやりたい」という健さんの意向で、亡くなる1年半前に縁組をしたといいます。
健さんは、両親が既にこの世を去り、配偶者もおりませんでしたので、3人兄妹の内、妹が健在で、本来ならば健さんの40億円以上ともいわれる莫大な遺産はその妹が一人で受け継ぐはずでありました。しかし養子縁組により、遺産全額が養子の女性のものになったのです。
また、コメディアンで映画監督の北野武さんも、将来の相続を見据えて養子縁組を行った一人だといわれています。つまり自分の孫を養子にしたわけです。
自分の孫を養子にすると、将来起きるだろう子から孫への相続を一回なくせることになります。また、自分が死亡した時の相続でも基礎控除額が増えるなど多くの税負担軽減メリットを享受することができます。
ただし、孫養子の場合は、税制面で相続税の「2割加算ルール」の対象となるデメリットもあります。孫養子は法定相続人として扱われるものの、相続税法上の一親等に当たらないため相続税額が20%上乗せされるのです。孫養子が増えることで税負担がどのように変わるのかシュミレーションすることは必要になると思います。
今年11月初旬、孫養子をめぐる裁判で、最高裁がこれまでの判例を覆す際に開かれる「大法廷」を12月に開廷することを決定しました。この裁判では相続税対策のために結ばれた養子縁組が有効かどうか争われ、2審では「税理士が勧めた相続対策に従ったに過ぎず、孫との間に真実の親子関係を作る意思はなかった」として、縁組を無効と判断していました。
この判断が覆されれば、司法が相続対策の孫養子に一定のお墨付きを与えるということになります。
とはいえ、税金の為だけの養子縁組は税務署に否認される恐れがあるのも確かです。
相続税法の実務を定めた基本通達63条の2では、「相続税の負担を不当に減少させるためと税務署が認めた養子については、法定相続人から除外される」と規定しております。
ただし、何が不当かを具体的に線引きするのは難しく、これまで同項によって否認された事例は一件もありませんが、リスクはゼロではありません。
養子縁組によって子供が増えるということは、法定相続人が増えることを意味し、一人につき基礎控除額は600万円増えます。同様に生命保険金と死亡退職金の非課税枠も一人につき500万円それぞれ増加します。
ただし、法定相続人の増加は他の相続人の取り分の減少を意味し、本来もらえるはずのなかった人が増えれば、トラブルが起こる確率は、飛躍的に高くなるでしょう。
相続対策の結果として、財産を残された人が不幸になったり、家族が争ったりしては意味がありません。養子縁組という制度を検討するのならば、トラブルを予防するために家族全員で事前に話を通すなど慎重な対応をしてもらいたいものです。