前話の答えですが、天皇とはいえ、一個人に変わりはないので、納税義務はあります。
所得税法第9条には、所得税を課さないものとして「皇室経済法第3条、第4条及び第6条 の規定により受ける給付」をあげています。
つまり、これ以外は一般国民同様に納税義務があるというわけです。
非課税にあたるのは「内廷費」「皇族費」、そして「宮廷費」です。これは歳費として国から支給されます。
「内廷費」とは、天皇家と皇太子家に支払われるお金。それ以外の皇族には品位保持を資する目的から「皇族費」が支給されます。
まず内廷費ですが、法律により定額が定められ、平成26年度は総額3億2400万円。皇族費も同様に定額が決まっており、同年度は各宮家に3050万円が支給されました。総額にすると2億6281万円となっています。内廷費、皇族費として支給されたものは、御手元金となり宮内庁の経理する公金にはなりません。
なお,皇族費には、皇族が初めて独立の生計を営む際に一時金として支出されるものと皇族がその身分を離れる際に一時金として支出されるものもあります。
高円宮家の次女典子さまが出雲大社の権宮司千家国麿さんとご結婚されましたが、皇室典範の規定により皇族の身分を離れるのに伴い一時金として、「女王」(天皇との血縁が孫より離れた女性皇族)の限度額1億675万円が支給されたそうです。平成7年に今の天皇陛下の長女、黒田清子さんが結婚した際は一時金として1億5250万円が支払われました。
宮廷費は、儀式、国賓・公賓等の接遇、行幸啓、外国ご訪問など皇室の公的ご活動等に必要な経費、皇室用財産の管理に必要な経費、皇居等の施設の整備に必要な経費などで、同年度は55億6304万円となっています。
宮廷費は、宮内庁の経理する公金です。
ちなみに、皇族維持にかかっているお金に宮内庁費があります。
宮内庁運営に必要な人件費・事務費などが主なもので,同年度は106億8997万円計上されています。
所得税の納税についてですが、昭和天皇は生物学者として多くの書籍を出版していますが、もちろん印税という話にもなってきます。
ただ、昭和天皇は印税を受け取らず、代わりにその本を各国の研究所、図書館、研究者などに寄贈されたそうです。
このほか、皇族で非課税なのが相続税の一部です。相続税法第12条には「皇室経済法第7条の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物」が相続税の課税価格に算入しないとされています。皇位とともに伝わるべき由緒ある物、いわゆる「御由緒物」というものがそれに当たります。昭和天皇から今上天皇に相続されたものとして非課税になったのは、合計580件ありました。中には、三種の神器の「八咫鏡(やたのかがみ)」、「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」、「八坂瓊曲玉(やさかにのまがたま)」が入っています。
相続税を納税したケースでは、例えば、今上天皇が昭和天皇から遺産9億955万7千円を相続しましたが、約4億2800万円の相続税を納税されたそうです。
また昭和天皇の弟宮でいらっしゃる高松宮殿下が薨去された際には、課税遺産が約41億円あったそうですが、相続人の同妃喜久子殿下は、約350億円の相続税を納税されました。
このときは、高輪の御用地を国に寄贈するなどして一部納税資金をねん出されたと言います。皇族方も相続税には苦労されているのですね。