相続税の節税が目的の養子縁組が無効であるかどうかが争われた裁判で、最高裁判所は、主な目的が節税でも直ちに無効にならないという初めての判断を本日示しました。養子縁組は富裕層の間で節税の手段として広がっていて、31日の判決は現状を追認する形となりました。
今回の最高裁の初判断となったのは、福島県東和町(現二本松市)の町長だった男性のケース。男性は2012年に長男の息子と養子縁組をしましたが、その後、長男との関係が悪化したために離縁届を提出。孫側は、離縁は無効とする別の訴訟を提起し「離縁は無効」との判決が確定していました。この訴訟の最中に男性は死亡しましたが、男性の娘2人が「父親に養子縁組の意思はなかった」として改めて養子縁組は無効とする今回の裁判を提起しました。
一審の東京家裁は、「男性には養子縁組の意思があったと推定される」として娘等の請求を棄却。しかし二審の東京高裁は、男性が生前に税理士から養子縁組すれば節税になるとの説明を受けていたことなどから、「養子縁組は相続対策のためだった」、「孫との間に真の親子関係をつくる意思はなかった」として縁組を無効と判断。孫側が上告したことで舞台は最高裁に移ったものです。
孫を養子にした目的の1つは、相続人の数を増やして相続税が非課税になる控除の額を増やすことで、裁判では無効になるような形だけの養子縁組だったのかどうかが争われました。
31日の判決で、最高裁判所第3小法廷の木内道祥裁判長は、節税の目的があるからといって養子縁組の意思がないとは限らず、主な目的が節税でも直ちに無効にならないという初めての判断を示しました。
そのうえで、今回のケースでは縁組の意思がないことをうかがわせる事情はないとして有効と判断しました。
相続税の制度では、遺産の総額のうち3000万円は課税対象から除外される「非課税枠」で、さらに、相続の権利を持つ人1人につき600万円の枠が追加で認められます。
また、実の子どもがいる場合は養子1人分まで、子どもがいない場合は養子2人分まで、「非課税枠」が認められています。