トランプ米大統領が1月31日、日本の為替政策を円安誘導と批判したことで、巨額の対米貿易黒字を抱える中国だけでなく、日本も「為替操作国」に認定される懸念が出てきました。トランプ氏は中国製品に45%の関税を課すと報復措置を予告しており、日本も標的になりかねません。米新政権が要求する2国間の通商協議でも焦点に浮上しそうです。
もともとトランプ米次期大統領は人民元の下落が行き過ぎていることを1月17日に批判しており、「ドルは強すぎる」と発言していました。それによってドルは下落、為替相場は円高方向に飛んでおります。
同日、英国ではメイ首相がEU単一市場からの秩序ある離脱を目指すと表明しました。
これを受けて無秩序な離脱が回避されるとの見方から、ポンドは急速に買い戻され、こうした動きが重なり、外国為替相場ではドルが主要通貨に対して下落しました。
これまでのトランプ氏の主張には、しっかりした一貫性がありません。むしろ矛盾が目立っております。その為、同氏の発言や政策スタンスをもとに、為替相場の展開を予想することは非常に困難です。
1月11日の記者会見にて、トランプ氏は「国境税」に言及しました。米国向けの完成品などを輸入する企業には、多額の税金を課すという考えです。これは、米国の産業を守ろうとする“保護主義政策”にほかなりません。
そして、同氏の想定する国境税の概念はかなり広く、詳細はわかりません。共和党も税制改革の一環として輸出にかかる法人の税負担を軽減し、輸入企業には税負担を課すことを検討していますが、トランプ氏の考えと同じではないようです。
トランプ氏は保護主義を重視しています。それは米国からの輸出を増やし、経済を成長させることを意味します。そのためにはドル安が重要な鍵になります。
かねてから中国を批判してきたトランプ氏ですが、ドル高・人民元安が行き過ぎだと批判するのは自然な展開だと思われます。2014年半ば以降、ドル高は米国企業の収益を圧迫してきました。米紙報道を受けて市場参加者がドル高の悪影響を警戒し、ドル買いポジションの調整が進んだのも当然といえましょう。
同時に、トランプ氏の主張には矛盾があります。トランプ氏は米国で、企業が雇用、生産、投資を増やすことを強要しています。
この動きが進むとの見方が広まると、ドルは買われやすくなります。現在、米国の消費者物価指数は緩やかに上昇し、連邦準備制度理事会は2019年末まで年2~3回の利上げを想定しています。その中で米国に企業を回帰させようとすれば、ドル高観測に拍車がかかるかもしれません。
トランプ氏の問題は、政策の矛盾を解消しないまま主張や批判を繰り広げていることです。記者会見後、金融市場では国境税がトランプ政権の政策を判断するポイントになるとの見方が広まっています