天皇陛下の生前退位をめぐって、政府の有識者会議が現天皇に限っての特例法とする方向で「論点整理」が発表されました。天皇は憲法で定められた制度ではありますが、日本人の心情としては存在そのものが尊敬の対象と思われます。いくらご存命のうちに退位されたとしても新天皇というよりは引退された陛下の方を崇めてしまう気がします。御年齢とお身体の具合に応じて公務できないものでしょうか…。
天皇陛下の生前退位については、税金面でも大きな問題が生じてしまいます。
天皇陛下はじめ皇族の方々も、日本人である以上は、税金を納めていることは第60話でお話しした通りです。昭和天皇がお亡くなりになられた時の相続では、陛下は4億2千8百万円の相続税をお支払いしました。今回のように相続ではなく、生前退位として、三種の神器を受け継いだ場合、税金はどうなるのでしょうか?
相続税法では「皇室経済法第7条の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物」には相続税の課税価格に算入しないことになっております。しかし、この規定では相続税の課税価格に算入しないとはありますが、贈与税の対象外とはされておりません。皇室経済法に記載がない場合は一般法に従いますから、草薙剣(くさなぎのつるぎ)や八坂瓊曲玉(やさかにのまがたま)、八咫鏡(やたのかがみ)は課税対象になります。三種の神器は国宝級の品ですから、どのように評価するのでしょうか。どんな専門家でも三種の神器の鑑定なんてできないように思います。
実は陛下ご自身も三種の神器は見たことがないというお話です。八坂瓊曲玉は宮中にあるそうですが陛下すら実見できず謎に包まれております。八咫鏡は伊勢神宮に、草薙剣は熱田神宮にあり、陛下のそばには形代(かたしろ)と呼ばれるレプリカがあるにすぎません。
「生前退位」問題は、蓋を開ければこうした課題が山積みとなっております。