日産自動車株式会社は23日、4月1日付けで、西川 廣人が社長兼最高経営責任者に就任すると発表しました。本件は社長のカルロス・ゴーンの提案に基づき、同社の取締役会が決定した事項です。ゴーンは引き続き代表権のある取締役会長を務め、6月の定時株主総会終結をもって任期満了となるため、再任取締役候補として本総会に付議される予定です。
このゴーン社長は、役員報酬が10億ということで年収の高すぎる社長として有名かもしれません。しかし、ゴーンは、日産の業績をV字回復させた人物であります。ゴーンが就任する前の日産は、約2兆円あまりの有利子債務を抱えていた状態でした。しかし、そこにゴーンが加入し、驚異的な経営術で日産を見事に復活させました。
1999年、かつてトヨタと並んで日本自動車業界の2大巨頭として君臨していた日産自動車は、上場企業としては史上ワースト記録となる6844億円というとてつもない額の赤字を計上し倒産の危機に陥っていました。その状況を打開すべく、2000年3月、提携先のルノーから送り込まれてきたのが、ゴーンでした。長年続いた赤字をたった1年で黒字に転換させ、ブランドイメージまでも急上昇させたゴーン。倒産寸前とまで言われた日産を救ったその手法とは如何なるものなのか?
ゴーンは各セクションから若手のエース級社員200人を集め、部署の垣根を越えて、日産の問題点を洗い出させました。そうして、わずか3ヵ月で作り上げたのが、「日産リバイバルプラン」です。
「日産リバイバルプラン」は1999年10月に発表し、2000年4月から実行されたもので、下記に掲げる大胆な 3つの必達目標を全て1年前倒しで達成しました。
1. 2000年度に、連結当期利益の黒字化を達成
2. 2002年度に、連結売上高営業利益率4.5%以上を達成
3. 2002年度末までに、自動車事業の連結実質有利子負債を7000億円以下に削減
この計画で大切にしていたことは数字です。とにかくゴーンは目標を数値化して分かりやすくしました。また、そうすることで現状がどうなのかということも把握しやすくなりました。
その計画の一つ「日産180」は180度ということも意味していますが、下記の計画を意味します。
1・・・3年間での販売台数をグローバルで100万台増やす
8・・・8%の連結売上高営業利益率の達成
0・・・負債をゼロにする
この10年間でとにかく売り上げが落ち、収益性も下がっていて、負債も膨大な額に膨れ上がってきていました。それが、2000年以降10年間は、それを180度変化させて、とにかく収益を上げ、健全な財務状況、つまり負債ゼロの状況をつくり出すということも、意味に含まれていたようです。
ゴーンが最高責任者に就任するまでの日産はトヨタに次いで2位の位置にあることに安穏としていました。
原材料の鉄鋼についても長年取引していた鉄鋼会社に、例えば「10%の値引きをしてほしい。」と値引き要請をします。鉄鋼会社は「10%は無理だが7%ならなんとか」と返答したとすると、日産側は「ではそれでよろしく。」でした。
しかし、カルロス・ゴーンは違います。
「値引きは10%だ。それができなければ他の鉄鋼会社に取引を変更する。」
容赦はありません。そのようにコストを削減してきました。
ゴーンはこれまで日産が排除しきれなかったいわゆる日本的なしがらみを木端微塵に破壊しました。また、そうしなければ日産に未来はないと痛烈に感じたのかもしれません。
ゴーンが今後どのように三菱自動車を復活させるのか?かつて日産を復活させた手法そのままではないにしろ、徹底した構造改革を打ち出し実行していくことが予想されます。
今後の活躍を期待しております。