絶対にお得で利用しないと損ですよ!
雑誌やテレビでさかんに特集されている、ふるさと納税。
このふるさと納税の額が急増していることがわかりました。
総務省が発表した平成27年度の額は、1650億円。
前年度に比べて一気に4倍、まさにバブルの様相を呈しています。
このふるさと納税制度、限度額が設けられているために、お金のある人ほど、より多くの税金を控除してもらえる富裕層にとっての節税や減税になっているという批判が年々強まってきています。
そのツケは、誰が払うことになるのでしょうか?
もちろん、ふるさと納税を利用した納税者の住んでいる自治体が払うことになるのでしょう。これは、お住いの自治体の税収が減額されるということを意味します。
特典が魅力ではない市町村では「ふるさと納税」をする住民は多いが、してくれる住民が少ないことになります。その結果、その市町村の住民税が大きく減り、危機感を募らせる結果となります。
生まれ故郷や、応援したい自治体をサポートするという、ふるさと納税。
本来の理念を守っていくために何が必要なのか、少し考えてみましょう。
もともと、この制度、ふるさと「納税」とは言っていますが、実は、税ではありません。実際は自治体への寄付です。なぜ、こういう形をとっているかといいますと、もともとの発想は、地方で生まれ育った人が、大人になると都会へ出ていって人口も税金も、都会に集中してしまいます。そこで、今は都会に住んでいる人でも、いわば、生れ故郷への恩返しとして、住民税などの一部を地方に納税できないだろうか、といったことが本来の趣旨だったはずです。
しかし、税の論理で言えば、住民税というのは、あくまで住んでいる自治体に納めるのが筋であって、住んでいない所に納めるわけにはいきません。
そこで、では、応援したい自治体に寄付をすることにしましょうということになります。
そして、その寄付した分だけ、いつも払っている税金の中から控除すれば、その人の負担は、これまでと変わらず、新たな負担は必要ないことになります。
どうせ税金を払うなら、自分の好きな所に収めたい。自分が本当に納得できる所に収めたい。そういう納税者の要求に応えるための制度が、ふるさと納税の最大の意義です。だからこそ東日本大震災や、熊本地震の被災地に全国から多くの人が、ふるさと納税をして、被災地の復興の助けとなっているのです。そういう点では、ふるさと納税は大きな役割を果たしています。
ところが、ここで話しが変わってくるのは次第に、多くの自治体が、お礼の品、返礼品を競うようになってきたことです。
自治体からすれば、よその人から、ふるさと納税をしてもらうためには、何か特典でも出さないといけないと思うわけです。
ふるさと納税をする人にとっては、寄付する額は、後で税金から控除してもらって、元はとっているわけですから、この返礼品の分だけ、ほぼそのまま、「もうけ」ということになります。
この返礼品競争が始まったことでふるさと納税は、様変わりしました。
それまでの、納税先を選択できる、という制度から、2000円を払えば豪華な返礼品がもらえるお得な制度、という位置づけになって、一気に人気に火がついたわけです。
そのことにより、まず、各自治体が、返礼品合戦を過熱に競争しあうことになりました。年々、寄付の額に占める返礼品の値段、いわゆる返礼比率が上がってきています。
自治体が、どんなに、多額の返礼品を送ろうと、そのお金が地元の名産品の購入などに使われていれば、それは、確かに重要な地域振興策になります。
しかし、今や返礼品競争はさらに過熱して、家電製品やパソコン、そしてついには金券までが登場してきています。そして、こうした商品が、オークションで転売されていることが報じられています。こうなると、もとは税金であるお金が、個人にお金で還元されているということになります。
総務省はふるさと納税の返礼品の価格について、寄付額の3割までに抑えるよう全国の地方自治体に要請しております。自治体が寄付金を集めるために高額すぎる返礼品を競って導入していることに歯止めをかけるためです。返礼品の金額の目安を設けるのは初めてで、寄付の多くを自治体の手元に残して地域活性化の原資に充ててもらうことが目的です。
これでも本来の趣旨に戻すには、まだ問題点は残ります。
解決策としてこれとは別に、返礼品を出した場合は、その額は、税金から控除しない、という案も出されています。
これも、富裕層ほど、節税になる、ということへの一定の歯止めになります。
東日本大震災や、熊本地震では、多くの人が、返礼品はいりません!返礼品は辞退します!ということで、ふるさと納税をしています。
お得かどうかで、寄付する先を選ぶのではなく、本当に応援したい自治体に寄付をする、そういうふるさと納税本来の理念を守るための見直しが今一度必要なのではないでしょうか。