酒と税をめぐる問題が改めてクローズアップされてきています。サッポロビールの「極ZERO」が税金の安い第3のビールにあたるかどうかをめぐって国税当局と対立してきた問題が再燃し始めてきました。サッポロは4月11日、自主納付した酒税115億円の返還を求めて国を相手取って東京地裁に提訴しました。この問題を少し振り返ってみましょう。
サッポロが「極ZERO」を発売したのは2013年6月。サッポロ独自の新製法で、痛風の原因であるプリン体や糖質を0にした業界唯一の商品として売り出し、しかも酒税の安い「第3のビール」としての出荷は好調でした。しかし国税庁が2014年1月サッポロ側に対し、製造方法の情報提供を要請。ビールの分類は麦芽比率でビール、発泡酒、第3のビールに分けられ税率が異なっていますが、「サッポロ 極ZEROは第3のビールには該当しない可能性がある」と指摘しました。
サッポロ側とすれば「極ZERO」は第3のビールとしての税率を基に売り出していましたが、第3のビールでないとなると税率が変わり納めるべき酒税が高くなり「極ZERO」の価格では売れなくなります。サッポロ側は「極ZERO」の製造を中止し、ビールに課せられる税額と第3のビールとのこれまで販売した本数の差額に当たる約115億円を自主的に追加納税しております。
しかし2カ月後の2014年7月にはサッポロ側は製造方法を見直し「極ZERO」を発泡酒として再発売。そのうえでその後の社内調査で、もともとの「極ZERO」は第3のビールであるとする判断をし、2015年1月26日、自主的に追加納税した約115億円の返還を国税当局に求めたのですが国税当局の回答は「返還しない」という内容でした。
問題は争点を残したまま、沈静化したかに思えましたが今回、サッポロは、「返還を断念すれば株主に説明がつかない」との判断から司法の場で争うことを決定した模様です。
そもそもこの問題の争点は、「発酵」をめぐる見解にあるようです。
第3のビールには製法が2種類あって、大豆やエンドウなど麦芽以外の穀物類を発酵させて造るやり方と、もう一つは「極ZERO」と同じ製法で発泡酒にスピリッツ(蒸留酒)を加えるやり方です。
国税庁側は、「極ZEROは発酵が不十分な段階でスピリッツを加えているため、第三のビールとはいえない」と指摘しています。対するサッポロ側の不満は、発酵と判断できる状態が明確でないことです。酒税法では、発酵状態であると判断する定量的な基準は示されていません。この問題は、あいまいな第3のビールの定義が災いしたといえるのかもしれません。
ビール各社は、これまで税収増を狙う政府と税率をめぐって攻防を繰り広げてきました。
次回は、その歴史について書いてみたいと思います。