納税義務者又は徴収納付義務者が、偽りその他不正の行為により、所得税ないし法人税を免れ又はその還付を受けることを脱税と呼びます。以前では脱税事件で起訴されるボーダーラインは最低でも1億円は上回っていました。しかし最近では状況が変わり手口が悪質な内容のものであれば、2~3000万円程度の脱税でも起訴されるケースが増えています。脱税で起訴された場合100%有罪判決になりますから金額の多少にかかわらず割に合わない計算になります。
脱税の犯行態様としては、売上の除外と、架空経費の計上とが、典型的な手口とされています。業種的には、パチンコや水商売、風俗関係等において脱税が多く指摘されたこともあります。
さて脱税では総額が3億円と言うのが懲役などの実刑の目安となっています。
ただしここでもケースバイケースで、社会的な地位の高い人の場合は4~5億円の脱税額であっても執行猶予がついたりすることがあります。逆に脱税のプロと組んだ場合等では1億や1億5000万円程度でも懲役刑となる場合もあります。
また脱税で罰金刑となった場合でも罰金が納付できなければ労役上留置と言う名の懲役が待っています。いずれにしても脱税と節税ではそれほど効果に差がなかったような場合であっても、いったん脱税で起訴されれば前科者となります。長い目で見た場合に両者のどちらが有利か言うまでもありません
特に、否認事件や脱税額を納付していない事例では、強制捜査や実刑判決の可能性が高くなるとも指摘されています。
芸能人で巨額脱税により逮捕された人物に野村沙知代さんがいます。
2001年12月、約5億6800万円の所得を隠し、2億1,300万円を脱税したとして、東京地検特捜部に逮捕。2002年3月の公判で、懲役2年(執行猶予4年)、罰金2100万円の判決が下っています。
相続税においても、遺言を偽造して社会福祉法人などに寄付を装ったということで約5億円の脱税をしたとして落語家桂小軽ら7名が逮捕されております。
租税特別措置法70条で社会福祉法人に対して財産を贈与した場合には相続税はかかりません。したがってこれ自体は違法行為ではありません。ここでは遺言書の偽造という偽造有印私文書行使と、実際には贈与せず私的に使ったという内容の相続税法違反のようです。
この場合、指導した元税理士には懲役3年、罰金800万円、執行猶予4年(求刑懲役3年、罰金1千万円)が言い渡されております。