不動産の登記名義人が死亡した時には、その財産を受け取った人が所有権の移転登記をします。しかし、移転登記は任意であり、怠ったとしても、とりわけ罰則があるわけではありません。そのためか面倒な相続登記をせず、被相続人の名義のまま不動産を放置している方も見受けられます。
公益財団法人東京財団の自治体向けアンケート調査によると、回答した自治体のうち、相続登記が行われていないため、死亡者名義で固定資産税を課税する「死亡者課税」をしている自治体は16%もあるそうです。相続人から固定資産税を徴収できれば名義が誰であろうと自治体は困りません。さらに83%の自治体は「死亡者課税をしているかどうかもわからない」と回答し、ほとんどの自治体が実際の所有者を把握できないまま固定資産税を課税している異常な状況です。
登記しない相続人がいる理由は、手間やコストがかかるため。登録免許税や登記簿謄本代、交通費〈郵送費〉といった実費のほか、司法書士に依頼するのなら報酬が必要になります。
このように相続登記を怠った場合、どのようなリスクを負うのでしょうか?
相続登記をしないと不動産活用の際にリスクが生じます。つまり、売却や担保提供をする段階で支障が生じることになります。
親が数十年前に相続した不動産の相続登記をしないまま死亡したとします。新たに相続した子供が名義を書き換えるための登記をするには、親の戸籍を含め数十年前の資料を取り寄せなければなりません。しかし、役所にはすべての資料が残されているわけではありません。例えば、死亡した人の住民票の除票なら5年などと定められた「法定保存期限」を過ぎたものは、廃棄されている可能性があり、相続人がその不動産を売却もしくは担保提供するための資料を用意できないという事態が起こり得るのです。
売るに売れない不動産が発生しかねません。
このように相続登記しない相続人がいることを受けて、法務省が今月29日からスタートさせるのが「法定相続情報証明制度」という制度です。
次回は、この制度についてご説明します。