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2005年に起きたJR福知山線の脱線事故を巡り強制起訴され1審・2審で無罪判決を受けたJR西日本の歴代3社長について、最高裁は検察官役の指定弁護士による上告を退けました。歴代3社長をいずれも無罪とした判決が確定することになります。
 JR西日本の井手正敬被告、南谷昌二郎被告、垣内剛被告の歴代3社長は、乗客106人が死亡したJR福知山線の脱線衝突事故をめぐり検察審査会の議決により強制起訴され、業務上過失致死傷の罪に問われていました。
 1審の神戸地裁と2審の大阪高裁は「事故は予見できなかった」として3人に無罪を言い渡しています。
 検察官役の指定弁護士は無罪判決を不服として上告しましたが、最高裁は「JR西日本管内に2,000ヵ所以上も存在するカーブの中から特に事故があったカーブを危険性が高いと認識できたとは認められない」などとして、13日までに、この上告を退ける決定をしました。これで歴代3社長に対する無罪判決が確定することになります。

 私も以前、車掌を経験しておりますので、この事件がなぜ起きたのか合点がいきません。

 少しこの事故について検証してみたいと思います。

2005年(平成17年)4月25日午前9時18分ごろ、兵庫県尼崎市久々知にある福知山線塚口駅 - 尼崎駅間の右カーブ区間で宝塚発JR東西線・片町線経由同志社前行き上り快速の前5両が脱線。うち前4両は線路から完全に逸脱。先頭の2両は線路脇の分譲マンションに激突。先頭車は1階の駐車場へ突入。2両目はマンション外壁へ横から激突しさらに脱線逸脱してきた3 - 4両目と挟まれて圧壊。外壁にへばりつく様な状態で、1 - 2両目は原形をとどめない程に大破しました。また、3 - 4両目は反対側の下り線路を支障していました。

事故列車は、直前の停車駅である伊丹駅で所定の停車位置をオーバーランしています。これについて、事故が起きる前に運転士が車掌に対してオーバーランの距離を短くするように打診して、車掌が新大阪総合指令所に対して約70mのオーバーランを8mと偽りの報告をし、JR西日本も当初車掌の証言通り8mのオーバーランと発表していました。

事故発生と同時刻には、並行する下り線に新大阪発城崎温泉行きの特急「北近畿3号」が接近中でしたが、事故を目撃した近隣住民が近くの踏切非常ボタンを押したため、特殊信号発光機が点灯。運転士が異常を察知し、およそ100m手前で停車して防護無線を発報しており、二重事故は回避されました。

事故列車は、前から1・4・5・7両目の運転台のある車両に列車の運行状態を逐一記録する「モニター制御装置」の装備があり、航空・鉄道事故調査委員会が解析を行ったところ

前から5両目と7両目に時速108kmの記録が表示されていました。ただし、これが直ちに脱線時の速度を示しているとは限りません。先頭車両が脱線、急減速した影響で車列が折れ、連結器部分で折り畳まれるような形になったために、側面から玉突きになって被害が拡大したものと思われます。

当時、事故車両の1両目は、片輪走行で左に傾きながら、カーブ開始点付近の線路そば電柱に接触しマンション脇の立体駐車場と同スペースに駐車していた乗用車を巻き込むと共に左に横転、マンション1階の駐車場部分へと突入し奥の壁に激突。続く2両目も、片輪走行しながら、マンションに車体側面から叩きつけられる状態に加えて3両目に側面から挟まれるように追突されたことによって、建物に巻きつくような形でくの字型に大破。3両目は、進行方向と前後が逆になっております。4両目は、3両目を挟むようにして下り線(福知山方面)の線路と西側側道の半分を遮る状態でそれぞれ停止しました。

航空・鉄道事故調査委員会の鉄道事故調査報告書によりますと、当日、事故現場に至る以前から、JR東西線にてATS-P曲線速照機能が動作したり、分岐器制限速度を超過したり、ATS-SWの確認扱いを怠って非常ブレーキを動作させるなど、通常の運転ではあまり見られない操作を繰り返していた事が記録より判明しております。

また、始発の宝塚駅やその次の停車駅である川西池田駅に入線する際にも、それぞれ停止位置を間違えるなど、不自然な運転を繰り返していたことも判明しています。運転士がその遅れを取り戻そうと制限速度を超えた可能性、また、単純に焦りと動揺などからブレーキ開始位置を失念し掛けるのが遅れた可能性もあります。さらに、事故報告書によりますと、オーバーランした伊丹駅を発車後、最高速度いっぱいで力行・惰行の最中に運転士から車掌に車内電話があり、伊丹駅でのオーバーラン報告について「まけてくれへんか」と交渉されたと言い、この事に気を取られ過ぎて、ブレーキ位置を失念した可能性もあります。

なお当該線区に設置されていた自動列車停止装置(ATS-SW)はJR西日本では最も古いタイプのものとされ、あたかもこれが事故を防げなかった原因であるかのような報道がされていますが、ATS-SWでも速度照査用の地上子などの設備を設置すれば速度照査機能の付加は可能でありまして、ATS-SWそのものが直ちに事故原因につながるわけではありません。ちなみに事故現場には速度照査用の地上設備は設置されておりませんでした。

JR西日本は。国鉄時代から並行する阪急電鉄などの関西私鉄各社との激しい競争にさらされておりまして、その影響からか、民営化後のJR西日本にも競合する私鉄各社への対抗意識が強かったとされて、私鉄各社との競争に打ち勝つことを意識するあまり、スピードアップによる所要時間短縮や運転本数増加など、目前のサービスや利益を優先し、安全対策が追いつかなかったと考えられます。

また同社においては、先述の競争の激しさや、長大路線を抱えている点から、従業員がダイヤの乱れた時における乗客からの苦情の殺到を過度に恐れていたとの指摘もあります。

同社の安全設備投資に対する動きが鈍かった背景には、先述の私鉄各社との競争などによるスピードやサービス競争を優先させたほか、民営化後多数の赤字路線を抱えていたこと、阪神・淡路大震災で一部の施設が全壊ないし半壊するなどの被害を受けたことや、山陽新幹線のコンクリート崩落問題で多額の支出を強いられたこと、さらには一部の株主が利益に対する配当を優先させる要求に出たことなどが挙げられます。

本件事故を起こした運転士は運転歴11か月で、運転技術や勤務姿勢が未熟だった可能性があります。この背景には、国鉄分割民営化後の人員削減策で、特にJR西日本においては他のJR各社と比べると長期間にわたって新規採用者を絞り、定年退職者がまとまった数になったのを契機に採用者を増やしたため、運転士の年齢構成に偏ったばらつきが出て、運転技術を教える中堅およびベテラン運転士が少なくなったといわれております。

 運転士に言われてオーバーランの距離をごまかした車掌。そんな車掌はいてもいなくても同じではないか。異常な運転士の行動が予見できているにもかかわらず、なぜ異常なスピードに加速した車両を車掌弁で急停止できなかったのか。(車掌には異常時に対して急ブレーキをかけることができる車掌弁なるものを扱う義務があります。)

 最近、ベビーカーが扉に挟まったまま車両を発車させたという事例も聞いております。このように以前の国鉄時代には考えられない事故が最近JR各社で多発しております。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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