犯罪の計画段階で処罰する「共謀罪」を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法が、与野党による徹夜の攻防の末、今月15日に可決成立しております。
当初の与党案では、税法も含む676の罪を対象としていましたが、強い反発もあり、今国会に提出された法案では、対象の罪は277まで削られました。
税法に絞ってみますと、所得税、法人税、消費税などは含まれる一方で、相続税が当初案から削除されるという謎が残りました。
同法は、テロ集団や暴力団といった組織的な犯罪集団を対象として、2人以上で犯罪を計画し、下見や資金調達といった準備を行った段階で全員を処罰するものです。その対象は殺人や放火から薬物の密輸、脱税まで多岐にわたります。
違法行為となる計画や下見の定義があいまいなこともあり、警察による権力の濫用を危惧する声は根強くあります。
政府はもともと676の罪を対象とした素案を作成していましたが、今年1月に法務省が示した法案では対象を277まで絞り込みました。もともとの法案にあり、成立した法にないものとしては、爆発物使用、強盗強姦、酒酔い運転、そして相続税法違反などがあります。
法務省は法案の提示に当たって、削除した399の罪について、8つの理由に分類して決定したと説明しました。
それによれば
- そもそも共謀が不可能な単なる不注意による「過失犯」
- 未遂に終わった犯罪について未遂そのものを罪状とする「独立未遂犯」
- 犯罪を結果、予測していなかった重大な結果を引き起こした「結果的加重犯」
- 既に陰謀罪や共謀罪が規定されている「条約上の義務なし」
- 元々の罪に共謀などによって罪が加重される規定がある「加重類型」
- 犯罪に至る準備を罰する「予備罪」
- 同様に犯罪に至る準備を罰する「準備罪」
- 組織的犯罪集団が実行を計画することが現実的に想定しがたい犯罪
以上が削除されたそうです。
そもそも共謀罪の対象にならないものや、今回成立した共謀罪によって代用できるものが、その対象となりました。
そして法務省はそれぞれの具体例として
- 業務上過失致死傷
- 爆発物使用未遂
- 強姦致死傷
- 内乱罪
- 強姦強盗
- 覚せい剤の輸出入の予備
- 通貨偽造準備
- 飲酒運転
などを挙げております。
そこで税法に絞ってみますと、元々の素案に入っていたもののうち、所得税、法人税、消費税、地方税の脱税については共謀罪に組み込まれた一方で、相続税だけが除外されております。
上記8類型のうち、相続税が除外された理由は明らかにされておりませんが、所得税や法人税とこれらの条件下で明確に違う点は見い出しにくく、説明がつかないと言わざるを得ません。