~ 誰もが被相続人候補 ~
諸々の事情から「勝たなければならない相続」というものもあると思います。しかし、「もめたら負け」というのは厳然たる事実です。税務上も、未分割状態ですと小規模宅地の特例は使えないなど、その代償としての不利益はいくつもあります。
やはり、被相続人の元気なうちに、話し合っておくことが最善です。
もちろん、家族会議でもめるかもしれません。でも、どうせもめるのなら生きているうちの方が格段に良いのも確かです。どんなに喧嘩したとしても「一度も話し合っていない」という家族に比べて「争族」になる確率は格別に下がります。
重要なのは、話し合いを誰がリードするかです。そもそも誰を被相続人に想定しているかという基本問題を考えないといけません。多くの場合、最年長者で、最も資産がある方を、何の疑いもなく唯一の被相続人候補に仕立てていないでしょうか?これは実は、大変おかしな話です。「突然の不幸にも備えておく」のならば、出席者全員について「いざ」の場合について話し合いをすべきです。
死を連想する相続は、タブー視される傾向はいまだにあります。それでも話し合っておかなければならないとしたら、家族がお互いを最大限尊重し、心からの信頼の上で会話を成り立たせることが絶対条件となります。そうした認識の上に立っているからこそ、生前の話し合いが遺言書の何倍も力強く、相続対策としての効果を発揮するのです。
そのように考えると、話し合いの招集者は「必要性を認識した人」となるでしょう。どうぞ皆さん、相続対策を誘導してください。そして多くの人に相続について話し合う必要性を説いてください。
親が残した財産が元で身内が争うことは、不幸なことです。大切な人を亡くした悲しみが、さらなる悲しみを生むきっかけにならないように願うばかりです。