対策④ 贈与税の特例を利用した「一括贈与」で相続税を節税
第208話の対策③で紹介した「生前贈与」は本来長い年月をかけて毎年コツコツ行う相続税対策です。
これに対し、贈与税法では、要件を満たせば「一定金額まで無税」で「一括」で贈与できる特例が用意されております。
またこれらの特例は、相続発生前3年以内に行ったとしても問題なく相続税の節税になります。
相続まで時間がない方にとっては、毎年コツコツ贈与をする方法よりも有効な手段となり得ます。
教育資金の一括贈与
子どもまたは孫が、父母または祖父母から将来の教育資金を前倒しで一括贈与を受けた場合、後々学校などに支払う費用であれば、1,500万円までの贈与は贈与税がかかりません。(贈与は平成33年12月31日までに実施しなければなりません。)
なお、贈与をする人の年齢は問われませんが、贈与を受ける子どもや孫が30歳未満で資金を利用するものに限られます。
住宅取得資金の一括贈与
子どもまたは孫が、父母または祖父母から将来の住宅の取得・新築・増築等の資金を前倒しで一括贈与を受けた場合、以下の金額までは贈与税がかかりません。(自宅の取得などの契約が平成33年12月31日までに締結された場合に限られます。)
住宅等新築にかかる消費税が8%の場合
住宅の新築等の契約締結日 | 省エネ等住宅の場合 | 省エネ等住宅でない場合 |
平成28年1月1日~平成32年3月31日 | 1,200万円 | 700万円 |
平成32年4月1日~平成33年3月31日 | 1,000万円 | 500万円 |
平成33年4月1日~平成33年12月31日 | 800万円 | 300万円 |
住宅等新築にかかる消費税が10%の場合
住宅の新築等の契約締結日 | 省エネ等住宅の場合 | 省エネ等住宅でない場合 |
平成31年4月1日~平成32年3月31日 | 3,000万円 | 2,500万円 |
平成32年4月1日~平成33年3月31日 | 1,500万円 | 1,000万円 |
平成33年4月1日~平成33年12月31日 | 1,200万円 | 700万円 |
↑全て平成28年11月28日改正後の数字です。↑
省エネ等住宅と認められるためには、住宅性能証明書、建設住宅性能評価書等の証明書が必要となります。また、贈与をする人の年齢は問われませんが、贈与を受ける子どもや孫が20歳以上で、年収が2,000万円以下であることが条件です。
結婚・子育て資金の一括贈与
子どもまたは孫が、父母または祖父母から将来の結婚資金・子育て資金を前倒しで一括贈与を受けた場合、後々結婚や子育てに利用したことを証明できれば1,000万円までの贈与は贈与税がかかりません。(贈与は平成31年3月31日までに実施しなければなりません。)
なお、贈与をする人の年齢は問われませんが、贈与を受ける子どもや孫が20歳以上50歳未満でないと適用されません。また非課税枠1,000万円のうち結婚資金は300万円までです。
配偶者に対する居住用不動産の贈与
仲睦まじい夫婦のことを「おしどり夫婦」といいますが、この規定は「おしどり贈与」と呼ばれており、婚姻期間が20年以上の配偶者間での居住用不動産の贈与については2,000万円までの贈与は贈与税がかかりません。(110万円の基礎控除とは別枠)
なお、「おしどり贈与」を実施しなくても居住用不動産については「小規模宅地等の特例」という相続税法上の優遇規定も存在します。
そのため、贈与の際の登記費用や将来の相続税率によっては、結果として節税にならない場合もありますので、贈与を実施する前には相続専門の税理士に相談するようにしましょう。