厚生年金と国民年金の2016年度決算が発表され、ともに2年ぶりに黒字に転じたことがわかりました。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による公的年金の運用が好調であることが影響しています。
厚生労働省によれば、会社員などが加入する厚生年金の16年度決算は、10兆5,031億円の黒字で、自営業者などが加入する国民年金は、2,440億円の黒字です。厚生年金と国民年金ともに、前年度はGPIFによる積立金の運用が5兆円を超える損失を出したことから赤字決算となっていました。しかしGPIFは今年4月から6月に5兆1,153億円の黒字を出すなど、4半期連続でプラスの運用成績を達成。黒字を重ねた結果、公的年金の決算も2年ぶりの黒字に転じました。
GPIFは長年、国民の積立金を損失リスクに晒さないために低リスク低リターンの国債などを中心に運用してきましたが、社会保障費の増大への対応などを理由に15年からは比較的高リスク高リターンな株式への投資を増やしてきています。資産のうち過半数を保ってきた国内債券は現在30%ほどで、その代わり国内株式、外国株式がともに約24%増やしてきています。
今回の決算でも、国内株式が2兆3,161億円、外国株式が1兆9,124億円の利益を上げる一方で、国内債券は14億円の赤字となっています。株式を中心とした積極運用は、運用難に苦しむ一方で、リスクをはらみます。
昨年度のように下落リスクを常に抱えることに加えて、その時になって市場から金を引き上げようにも、140兆円を抱える巨大ファンドであるGPIFの動きは市場そのものに影響を与えてしまうために損切りのための売却すら難しいことも予想されます。いかにも不動産市場に影響を与えるため、昔の赤字解消のための国鉄用地売却が迅速にできなかった国鉄時代のことが思い起こされます。
国民が積み立てた年金が原資なだけに、昔の国鉄のように経済や政治に影響を受けることのないよう独立した運用がなされることを望みたいです。