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 民法の相続制度には、特定の相続人が相続発生前に生前贈与や遺贈を受けていれば、それらを「特別受益」として一度相続財産に戻してから遺産分割を行う「持ち戻し」の特例があります。

 不動産や現金などの財産の種類にかかわらず持ち戻しの対象となりますが、数少ない例外が生命保険金です。保険金は受取人固有の財産とされ、税法上の相続財産とみなされて相続税は課されるものの原則として持ち戻しの対象とはなりません。

 このルールが配偶者や事業承継者にまとまった資金を残すためには生命保険が有利とされるゆえんです。 しかし原則はあくまでも原則で、例外もあります。

 2004年10月29日の最高裁判決は、保険金は受取人固有の財産というルールに新たな解釈を付け加えました。それによると、保険金の受取人とその他の相続人との間に生まれる差が「到底是認することができないほど著しい」時には、保険金も特別受益として持ち戻しの対象とするというものです。

 どこから「是認できないほど著しい」のかは、保険金の額や遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護などに対する貢献の度合いなどを総合的に判断するとされていますが、例えば金額だけで判断するなら、おおむね遺産総額に対する比率が45%から50%を超えると特別受益として持ち戻しの対象になると言えるようです。仮に現金1500万円と生命保険金2000万円で遺産総額が3500万円あったとしますと、保険金の比率は57%で持ち戻しの対象となりえることになります。持ち戻しが遺産分割の結果に大きな影響を与えることは言うまでもありません。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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