第601話 自殺による保険金受取
家族の特に大黒柱である稼ぎ頭が急な死を迎えた時、残された家族が頼りにするのは保険金ですが、通常は被保険者の死因が自殺であった時は、受取人に生命保険金は支払われません。被保険者が、死亡保険金を目的として自殺した可能性があるからです。ただ逆から見た場合、保険金目的での自殺ではないと認められるのであれば保険金は支払われることになります。
基本的に契約日から3年を過ぎた自殺であれば、保険金目的の自殺とは考えにくいために支払われるケースが多くなります。一方、3年以内であっても保険金目的の自殺ではないと認められれば、保険金は支払われます。例えば、夫が妻を受取人にして1年前から生命保険に加入していたところ、その後精神を病んで最近自殺したのであれば、精神疾患の発症が保険契約の後であるので、妻には保険金が支払われます。
保険会社は自殺に対して保険金を支払われなければならない義務を負わないものの、保険金の支払いを行われない場合には自殺であったことを立証する必要があります。そのため保険会社は保険金目的の自殺ではないかどうかを様々な角度から調べ上げます。例えば、被保険者の生活水準からみて保険金の額が高額過ぎないか、また一時期に同じタイプの保険に複数加入していないか、死亡直前に契約内容の変更がないかなどです。こうした状況が重なりますと、保険金目的の自殺であったことも否定できないと結論付けられてしまいます。
なお、困窮する家族に保険金を残すための自殺が保険金目的とばれてしまうケースで多いのは、皮肉にも家族にその旨を伝えるために書いた遺書の存在です。自殺によってつつがなく家族に保険金を残すことは極めて困難と言えます。警察発表によりますと、保険金目的の自殺は原因が特定された自殺者のうち1%未満にすぎないそうです。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
「所長の独り言」一覧はこちら
免責
本記事の内容は投稿時点での税法、会計基準、会社法その他の法令に基づき記載しています。また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行うか、十分に内容を検討の上実行してください。当事務所との協議により実施した場合を除き、本情報の利用により損害が発生することがあっても、当事務所は一切責任を負いかねます。また、本記事を参考にして訴訟等行為に及んでも当事務所は一切関係がありませんので当事務所の名前等使用なさらぬようお願い申し上げます。