税務調査の対象は、通常過去の申告書や各種法定調書などを基に行われますが、怨恨がらみのタレコミがきっかけになるケースもしばしばです。なかには〝大漁〟につながるケースもあるため、税務署では慎重に裏を取り、実地調査につなげています。

 一般市民からの情報提供、いわゆる〝タレコミ〟は税務署ではよくある話のようで、その対応は日々の業務に完全に溶け込み、一定のルールに沿って処理されています。

 税務署でのタレコミの窓口は総務課です。国税庁のホームページによると、「公益通報の受付・相談窓口」として、国税庁及び全国の各国税局の総務課の住所や、電話番号がズラリと掲載されています。タレコミがあった場合、いったんここで受け付けて内容を確認し、法人税や所得税、資産税などの担当部署へ回されます。納税者が他の税務署管内である場合は、所轄税務署へ、申告漏れ額の規模が大きかったり悪質性が高かったりする場合には、内容に応じて国税局の資料調査課や査察部に回されることもあります。

 タレコミ自体は、大抵は匿名であるため、電話や封書によるものがほとんどです。しかし中には、証拠資料を山のように抱えて税務署にやってくる人もいます。税務署にとっては居ながらにして情報が取れるチャンスであるため、こうした「お客様」には入念な聞き込みが行われます。

 タレコミのなかで最も多いのが、売上除外や経費の水増しによって税金をごまかしているといった内容です。また、事業が活況を呈しているにもかかわらず申告していないとか、他人名義の口座で取引をしているとか、財産を隠し持っているのに滞納している、海外で得た所得を申告していないなどの情報も相当数あります。事実に基づかない契約書や領収書、請求書、納品書などの作成依頼をしているなど、「紙類」に関する不正情報も多くみられます。こうした紙類情報の中には、白紙の領収書を要求された、集めているといった情報も含まれます。最近は、節税としての租税回避スキームに関する情報もあり、額も過大になるため、その解明は国税当局がもっとも力を入れている分野です。この手の情報が入ると国税庁、国税局のスキーム解明の担当部署に回されます。

 タレコミの多くは、怨恨がらみです。発信者は、仕事上でトラブルになった相手方、クビになった元社員、元経理担当者、元愛人など。タレコミがあると、税務署では過去の申告書や調査資料等をチェックし、必要に応じて反面調査をするなどして「裏」をとりますが、単なる嫌がらせや腹いせが目的の場合は、信憑性が疑われるものも多いので、真贋の見極めが重要になってきます。

 元経理担当者や元愛人などは、その立場であるからこそ知り得る情報があるので、具体的な現金、預金、有価証券の隠し財産の保管場所や土地の保有状況を聞き出せるケースもあります。

 税務調査は限られた人数で高いパフォーマンスが求められますので、申告漏れ額の規模や悪質性、他への影響などを考慮して対象を絞り込みます。そのため申告漏れの事実が分かったからといってそう簡単に税務署は動きません。実際に調査に移行するのは申告漏れ類が大きいもの、悪質性が高いもの、租税回避スキームに関するものに絞られます。

 不正の事実が確認できたとしても、額が小さければ、寝かせることもあります。数年後に調査することにより、その数倍を重加算税の対象とできるからです。

国税局にあげられた事案を長期間寝かせる場合は、資料調査課で保留をかけて税務署が調査できないようにしておきます。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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