第39話では、税制改正法案が出来上がるまでのお話を長々としてしまいました。いいたかったことは、配偶者控除の改正案は、まだ自民党の税制調査会の方針が固まっただけで、法律としての決定事項でないことを理解していただきたかったということです。
仮にこのような法案が通った場合、夫婦世帯に与える影響はかなり大きいといえます。
第6話 パート収入における税金の壁 の中でもふれていましたが、やはり配偶者控除の改正が現実味を帯びてきました。
それでは、今回の方針について、税理士としての私の私見を述べさせていただきます。
平成28年10月から、従業員501人以上の企業では、会社の健康保険などの適用を拡大するということが決まりました。
ほとんどの方が、サラリーマン世帯なので、このことを前提としてお話を進めたいと思います。つまり、妻であっても年収106万円以上の場合には、その会社の健康保険・厚生年金に加入することを前提にということです。
配偶者控除の適用要件として妻の年収を150万円以下という条件を付けた場合、女性の働き方にどのような変化が生じるのでしょうか?
考えるに
- 正社員として働く
- 長時間勤務の非正規雇用として働く
- 短時間勤務の非正規雇用として働く
が、考えられると思います。
主婦の働き方は、子供の年齢によって左右されると思います。
子供が小さいときは、(3)の方が多いでしょうし、大きくなるにつれ(1)(2)の方が増えていくと思われます。
最も、夫が転勤族の場合は、(1)の選択は難しいでしょう。
つまり、子育てが一段落した40代とか50代の主婦の中で、(2)の主婦が増えると一見思われがちです。
でもどうでしょうかね。長時間勤務の非正規は一番会社からしたら「良いように」使われ、夫が家事をやらないご家庭では、家事との両立は大変になるように思います。
だとすると(3)の主婦がやはり増えるのではないでしょうか。
ところで103万円の壁が150万円程度に引き上がる場合、どのような影響があるのでしょうか?
結論からいいますと、配偶者控除が適用される年収が150万円程度に引きあがっても、メリットはほとんどありません。大きくはだかる問題点として、2016年10月から出現した「106万円の壁」があります。年収106万円以上の収入があると、社会保険料の負担が、夫ではなく、自らに発生してしまうからです。つまり、肝心要の世帯収入が下がってしまいます。さらに、配偶者の会社で、扶養家族に対して支給される「家族手当」がある場合も注意が必要です。会社によっては、この手当てを出す基準を「年収103万円以下」としているところが多いので、恩恵を預かれなくなってしまう可能性があります。
それでは、社会保険も税金も気にせず世帯収入が増えるのは、いったいいくらまで稼げばいいのでしょうか?
一般的には妻の年収が160万円以上となると、世帯年収もUPし、手取りも増えると言われています。
でもどうでしょうかね。
年収160万円以上ということは、月額13万円以上稼がなければなりません。
短時間勤務の非正規雇用の方にとって条件はかなり厳しいといえます。