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 所得税や法人税にはない相続税独自のルールの一つに「連帯納付義務」があります。複数いる相続人のうちに誰かが相続税を払えないときに、他の相続人が肩代わりしてでも納めなければいけないという制度で、性格としては借金の連帯保証人に近い制度です。国税当局からするとだれが払うかは関係なく、遺産全体から生じた税負担分がすべて徴収されない限り徴収義務が果たされないことになります。

もちろん当局としてもできる限り本人から徴収しようとはしますが、様々な理由から納める能力がない、あるいは失踪したなどの理由で現実的に徴収が難しいとなれば、容赦なく連帯納付義務者である他の相続人のところに徴収にやってきます。そこで「自分には関係ない話です」とごねても無駄で、最悪の場合は連帯納付義務者の財産が差し押さえされることだってあり得ます。連帯納付義務を免れるには、相続放棄をするしかありません。

こうした現実を踏まえ、遺産分割協議をする際には、それぞれが負うことになる相続税額と、その納税資金にまで思いを巡らせた方がよいでしょう。たとえ他の相続人との関係が悪くても、ツケが自分にまわりまわってくることを考えれば知らないふりは出来ません。

なお連帯納付義務によって他の人の税金を肩代わりした場合には、本来の納税義務者に対して立替分を請求する「求償権」が認められています。この権利を使うか使わないかはその人の自由ですが、相手に支払能力があるにもかかわらずその権利を行使しないと、今度は立替分の贈与があったものとみなされて新たな納税義務が生じることになりますので注意してください。たとえば遺産分割協議が長引いてしまい、手元にまだ相続財産がないタイミングで納税を一時的に肩代わりしたが、その後、協議がまとまって遺産が行き渡ったというケースなどです。

連帯納付義務については、「自分の納税義務を適正に履行したものが、自己の意思に基づくことなく責任を負う結果となる」として税理士団体などから廃止を求める声もあります。しかし今のところ具体的な検討対象にはなっておりません。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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