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 国税庁は昨年末「タワマン節税」などの防止に向け、相続税の算定ルールを見直す通達改正を行いました。マンションの贈与を検討しておられる方もいらっしゃるでしょうが、ご本人が想像している以上の税負担になることも想定されます。

 まずは不動産の贈与について考えてみましょう。

 不動産を贈与された人は不動産取得税が課税され、固定資産税評価額の3%もしくは4%の税額を納めることになります。この税率は、住宅かそれ以外か、または用途の違いによっても変わります。

 また贈与により所有権の移転に伴う登記を行うことになります。この登記をしなければ、自分の所有権を主張できない状態になりますので、必ず登記は必要です。

 今年4月から相続登記の義務化が開始されていますが、贈与については義務化の対象となっていません。ただしその不動産を贈与された人が、その不動産を自分の所有物として主張し、それを売買したり賃貸したりするには、贈与を原因とする所有権移転登記をしておかなければなりません。

 この不動産の登記には登録免許税が課されます。贈与の場合、登録免許税は土地建物の固定資産税評価額の2%です。さらに贈与する不動産の価格によっては贈与税が課税されます。

 相続対策で配偶者に不動産を贈与したいというご相談は時々いただきます。不動産営業の担当者や金融機関が「奥様に不動産を贈与してはどうか」という提案をしてくるようです。

 婚姻期間が20年以上である配偶者から、居住用の不動産の贈与を受けた場合は、配偶者の特例があり2000万円までは贈与税が課税されません。基礎控除額がありますので、実際は2110万円までは贈与税が課税されないことになります。

 しかし特例を使えば贈与税を低く抑えられるメリットがありますが、一方で注意点もあります。

 贈与された不動産については、その贈与された配偶者の方が亡くなったときには相続税の課税対象になりますので、配偶者が多額の財産を持っている場合には、相続財産の上乗せとなります。

 逆に配偶者との財産の隔たりが大きい場合には、居住用の不動産を贈与しておくことの選択肢もあります。

 また将来的に老人ホームに入る原資として、その居住用不動産を売却することを考えておられるのなら、共有名義にすることにより、売却の際に夫婦それぞれに居住用不動産の3000万円控除の特例が適用できることになります。

 配偶者については、このように社会的配慮から優遇税制があるので、贈与しておくのも選択肢になりますが、今度は相続での不動産の移転にかかるコストについて見ておきましょう。

 まず不動産所得税は相続の場合は課税されません。贈与はお互いの意思によって成立するものですが、相続は不可抗力の側面があるので、非課税扱いとなります。

 また登記は固定資産税評価額に0.2%を乗じて計算した登録免許税が課税されます。贈与の場合は2%なので割安感があります。相続財産が、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えると相続税が課税されます。自宅の不動産については、配偶者への移転については、土地部分について330㎡までは80%の減額が認められますので、離婚を考えないのであればそもそも贈与による自宅の移転は必要ない可能性もあります。

 贈与税の改正により、生前贈与加算の期間が3年から7年に順次延長されています。小規模宅地の特例による減額は、あくまでも相続による取得に限られますので生前贈与加算された場合、この特例が使えなくなってしまうので注意が必要です。

 不動産の贈与を行う際には、税理士によくご相談のうえ検討した方が賢明です。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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