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 坂本選手は毎年の確定申告で、銀座や六本木の高級クラブでの飲食費を必要経費として計上していました。その額は直近5年間で総額約1億円に上ります。当局はこれらの支出をプロ野球選手として収入を得るために必要な支出と認めず否認しました。坂本選手側は「これまで飲食費として認められてきた」と反論し、すみやかに修正に応じませんでした。

 税法や通達、過去裁決事例などによると、経費として認められる費用とはすなわち「客観的にみて業務と直接の関連性を有し、かつ、業務遂行上通常必要な支出」をいいます。これらを「客観性」「直接性」「通常性」「必要性」の4要件といいます。坂本選手の場合、夜の飲み代が野球選手の業務に直接関係なく、また業務遂行上通常必要な支出とはみなせないと国税当局が判断したものです。

 どこからが経費となるのか、厳密に境界線が引かれているわけでもなく、また業種や地位などによっても経費に当たるかどうかは変わりますので、その判断は難しくなります。税務調査でも経営者が私的な支出を経費計上していないかは、必ずチェックされます。

 ただ裏を返せば、業務に必要な支出であるのなら、経費として主張することに引け目を感じる必要はありません。有名な「フェラーリ審判」では、走行距離などにより仕事のために使っていたと証明して2700万円のフェラーリの購入費用が経費として認められています。

 ともあれ必要なのは納得のいく説明ができているかどうかです。例えばクルーザーや別荘を取引先の接待や従業員の福利厚生目的で会社が持つことがありますが、社長がプライベートで購入したとみなされてしまいますと、維持費用などの関連支出は社長への給与となってしまいます。実際に社長や親族以外の人も事業上利用しているのなら、利用規程を作成したり、利用実績報告書の記載を徹底したりして証拠を残すことで税務署に疑問を抱かせない必要があります。

 社用車も同様で、例えば車庫証明を取得する際に保管場所を社長宅にすると、個人の車と不審を抱かれるおそれがあります。あとは「社員数が少ないのに社用車の保有台数が多い」「嗜好性の高い改造をしている」といった状況は事業性の有無について疑いをかけられるリスクとなります。事業用であることを証明するには運転日報を残しておきたいところですが、その際にも記載内容と走行距離にズレがないか確認が必要です。

 飲食費を経費にしたいのならば、領収書とともに、仕事に関係する同席者がいた事実を残しておけば、説得力のある証拠となります。たとえキャバクラやスナックでの支払であっても、本当に仕事に必要な支出だと説明できるのなら、経費で落とすのをあきらめる必要などありません。調査においても事業に使っている証拠をきちんと残し、堂々と経費性を主張できるようにしておきたいものです。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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