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 税務調査において重宝されているのが〝タレコミ〟です。その方法は投書や電話、直接税務署に尋ねてくるケースなど様々です。最近では国税局のホームページ上の意見募集コーナーに書き込まれる例もあります。当局では、こうした情報をベースに信ぴょう性などを調べあげ、核心を掴んだところで調査に乗り出します。

 タレコミの件数は意外に多く、税務署によっては週に数件あります。実際の脱税摘発まで結びつくことは少ないものの、中には場外ホームラン的な大きなヤマにぶつかる可能性もあり、現場では決して軽く扱ってはいません。

 情報提供者への対応は、とりあえず総務課の課長補佐に回すことが基本となります。もし課長補佐がいなければ総務課の誰かが対応するようにしています。

 こうしたタレコミの多くは「恨み」「妬み」「ひがみ」など、なんとかして痛い目に遭わせてやろうとする目的のものが多くみられます。当局は、脱税しているとされる対象と情報提供者がどういう関係にあるのか、そしてなぜ情報を提供する気になったのかという動機、脱税の具体的な方法なども聞き出します。これらの情報を基にして、統括官が中心になり、主にその会社の税歴表などを分析します。

 情報提供者は、従業員や元従業員、取引先、元愛人、共同事業者だったが喧嘩別れした人などが多く、中でも、元愛人女性からの密告は有力情報といわれています。

 情報が、現預金などの隠し場所や土地の保有状況など具体的であり、調査に直結する情報が多いためです。ただし感情的な言葉ばかり並べられた場合は、ガセネタになる可能性が高くなります。

 情報提供者が会計を扱っているなどして、税務・会計などの専門用語や業界用語を使っていると信ぴょう性ががぜん高くなります。また情報が具体的で、内部情報をよく知っていると判断された場合も信ぴょう性は高くなります。

 信ぴょう性が高い情報であると判断された場合、当局は、とにかくその情報提供者に長く、そして多くのことを話させようとします。些細な話から、決め手となる情報が得られる可能性があるからです。

 ところで、こうした情報提供者の保護態勢ですが、税務当局の神経の使い様は、かなりのものです。タレコミは情報提供者が体を張った行為だけに、情報提供者が誰であるかわかるようなやり方は絶対にしません。

 そうして内容を精査・分類して、これは行けると判断すれば、個人、資産、法人といった各関係部署に連絡されます。所轄が違えば、管轄税務署の総務課に連絡して、聞き取った情報を伝達して対応を任せることになります。

 いずれにしろ、今も昔も調査への道筋をつけるという点で、タレコミは変わらず大きな役割を担っているようです。

文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所

所長 栁沼  隆

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