第1161話 養子縁組前に生まれた子
「養子縁組前に生まれた子」が、死去した親の相続権を引き継げるのかについて争われた訴訟の上告審判決で、最高裁判所は「引き継げない」とする初の判断を示しています。最高裁は去年11月12日、「引き継げる」とした東京高裁の控訴審判決を破棄し、「引き継げない」とする初の判決を下し、原告側の初の逆転敗訴が確定しました。
民法は、相続予定の人が死亡した場合、その子供らが相続権を引き継げる「代襲相続」を認めています。ただし「養子縁組前の子供」は原則として対象外とされています。しかしその法解釈や実務運用面では、一部曖昧さが残っていました。
今回の最高裁判決は、解釈が定まっていなかったケースで相続の範囲が広がりすぎないように、厳格に判断されたものといえます。
原告は神奈川県に住む30代と40代の男女。原告の母親は、2人を生んだのち、原告の祖母の姉と養子縁組をしました。これにより、母は、叔母の実子である男性との関係は、これまでのいとこから兄弟となりました。
その後、2002年に原告の母は死亡し、養子縁組によってその「兄」となった男性も2019年に死亡しました。
「兄」の男性に子供はいないため、本来ならば原告の母親が「妹」として遺産を相続できたはずでした。原告は、代襲相続として母親に代わって自身らが相続できると考え、男性の遺産である土地・建物の所有権移転登記などを申請しましたが、登記官は権限なしとして却下しました。原告は、この処分の取消しを求めて国を提訴しました。
原告から見れば、被相続人の男性は、「母親のいとこ」でしたが、母親の養子縁組により、見かけ上、原告の叔父となります。しかし1932年の大審院(最高裁の前身)判例では「養子縁組前に生まれた子どもは新たな親族関係を生じない」と示されています。
裁判では養子縁組前に生まれた子どもの場合でも代償相続が認められ、死亡した親の相続権を引き継げるのかが争点となりました。
民法では、祖父母から孫への「直系型」について、養子縁組前に生まれた子供を明確に代償相続の対象外としています。しかし「おじ・おば」から「おい・めい」への「傍系型」については規定に不明確な部分がありました。
一審の横浜地裁は原告の請求を退けましたが、東京高裁では原告の主張が認められたため国が上告。最高裁の上告審判決は、原判決を破棄するとともに控訴を棄却。これにより原告の逆転敗訴が確定したものです。
文責 仙台市で相続税に特化した税理士事務所|栁沼隆 税理士事務所
所長 栁沼 隆
「所長の独り言」一覧はこちら
免責
本記事の内容は投稿時点での税法、会計基準、会社法その他の法令に基づき記載しています。また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行うか、十分に内容を検討の上実行してください。当事務所との協議により実施した場合を除き、本情報の利用により損害が発生することがあっても、当事務所は一切責任を負いかねます。また、本記事を参考にして訴訟等行為に及んでも当事務所は一切関係がありませんので当事務所の名前等使用なさらぬようお願い申し上げます。
